第3話 電脳空間にて①

 呆然と、していた。


 ──姉さんが、ぼくを裏切った。


 ショックだった。 

でも、いつかはこんな日が来るとも思っていた。


 ぼくはこの家の子供ではない。そのことがずっと、ずっと引っかかっていた。

 姉さんも今の両親も表面上は優しかったけれど、本当はぼくが迷惑なんじゃないかと、両親の遺産がなければ引き取ってくれなかったんじゃないかと、ずっと不安だった。


 いくら優しい言葉をかけてもらったからって、愛されているだなんて、思い上がったつもりはない。それでも、突きつけられた現実はあまりにもショックだった。


 呆然とするぼくに、楽しげな合成音声が話しかける。


「チャンスは残り二回です。誰の認知を再現するか、お選びください。実時間は刻々と過ぎてゆきます」

「……うん、わかった……」


 物分かりのいい言葉を口にして、でも、本当はなにひとつ、わかってなんかない。

 現状は痛いほど理解できるのに、心ばかりがちっとも納得できない。


 だけど、このまま死んでしまうのは嫌だった。

 たった3回のフラッシュバックでなにができるかわからない。

 それでも、信じた家族に裏切られて無駄死になんて、そんなのはごめんだ。


 ぼくは顔を上げ、言った。


「現状は把握できた。危機を脱する手がかりがほしい。次は押し入った犯人の認知を覗く」


 そう言うや否や、ぱあっ、と辺りが光に包まれた。


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