第3話 未完成の僕でも

地獄ツアーを終えた新人鬼達はコロシアムに到着した。

「ここがコロシアムで〜すっ!、みなさんにはここで格上の鬼さん達と戦ってもらいます!」

センはとてもにこやかに説明をする。

「あ!でも死ぬことはないから安心して!」

色んな話を聞くと、配属先には位があるそうだ。

その中でも『紅』『極』『潤』がトップだそうだ。

と、いうと…キルはトップのお方なのかと皆が思った。


死ぬことはないにしろ、格上となると新人鬼皆が震えた。

まだ戦ったことがない鬼が多いからだろう。

平和な世の中で生きてきた自分達は剣も何も持ったことがない。

「くっそ…なんで俺まで参加しなきゃいけねぇんだ…」

そう言った彼は先ほど脱走してキルが仕留めた地獄ツアーにいた男性だった。

新人鬼男性は、あの後すぐに手当てをしてもらってコロシアムに来たそうだ。

「まぁでも、俺は一度トップのお方に構ってもらえたんだ、それなりに良いクラスに入れるだろう…!」

完全にフラグを立てたと皆が思った。

「じゃあ君から行ってみる?えっと君は…あっ僕と勝負だね〜!」

そう、新人鬼男性は意外と期待されてたらしく、センとの勝負だった。

「じゃあ、ここから好きな武器選んでこっちにきてね〜、あっ、待機中のみんなは武器選んで関係者席に来て待って居てね〜」

アオリも武器を選ぶが、武器は半分錆びているものやなれない武器ばかりだった。アオリはそんな中、まだ他と比べてサビも少ないクナイを10本選んだ。

するとアナウンスが聞こえ、皆が関係者席に座った。

「これから、新人鬼配属先を決める。今回の位は星3、この中からトップ3チームに入れる確率は10%。リーダー期待度17%だ。トップバッターはこの新人鬼、バアジだ!」

あの新人鬼男性の名前が『バアジ』と言うことに初めて聞き、察したアオリであった。

「このメッシュ野郎か、まぁすごいんだか知らんが俺が勝つ!」

バアジがセンに斬りかかろうとした瞬間、センは消えた。

辺りを見回してもどこにもいない。会場全体がざわついている中、急にバアジが倒れた。その瞬間、センが現れた。

「期待した僕が悪かった。バカでアホで…ふふっ、ジジイ?」

会場皆が拍手をした。するとセンは口先に人差し指をあて「しっ」っと言った。

会場が黙る中、

「この子をチームに入れたい人〜!」

誰もが手も声も上げない中、1人だけが手を上げた。

「僕が引き取って差し上げましょう、訓練して差し上げます」

それは、コロシアムで敗北し、かつ良い行いをしなかったチーム、『訓』と言うチームだった。

バアジの身柄は即、訓のリーダーの元へ渡された。


他の新人鬼達も自分とは格上の相手と戦わされた。訓に入る人もいれば、地獄の鬼達のチームでも格下なチームに入れられた。

周りでは帰っていく客も多く、最後のアオリの番には最初にいた客の中で半分が減っていた。

「最後の戦いに参りましょう、メインステージ!現代ではちょっと有名人だったこの新人鬼、アオリ!!」

アオリはメインステージと言われ、緊張がさらにした。

「アオリに対するのは…このお方!キル!!!!!」

アオリは負けを確信した。新人とはいえ、数十メートルからバアジを仕留めたトップ1の紅の1人だったからだ。

「みんな〜見てる〜?キル様だよ〜!」

アオリの目にハイライトはなかった。

「アオリ!君とは他の新人鬼とは違う戦い方をする!」

コロシアム会場は一気に見慣れた風景に変わった。それはサッカースタジアムだった。

「俺さ!サッカー大好きなんだ!だから君とは、サッカー対決を申し込む!PK対決?って言うのかな!」

アオリはとても涙が溢れそうな光景に、キルとの勝負を受け入れた。

「望むところです!」

あたりも盛り上がったところで、開始のゴングが鳴らされた。

先行攻撃はアオリだ。

右足でサッカーボールを蹴り上げ、左端に狙いボールを蹴った。

が、人間にとっては早い球、鬼にとっては…

「おいおい!こんなもんか元人間のサッカー選手の蹴りは!」

サッカーボールは普通にキルに取られてしまった。

次はキルの番だ。アオリは死ぬ覚悟をした。

キルは右足でサッカーボールを蹴り上げた。

それはそれはとてもじゃないほど早かった。マッハレベルだ。

アオリは頭を抱えて自分の身を守ろうとした時、ボールがあと1メートルで弾かれ、落ちた。

会場はざわついた、何回も言うようだが、ナンバー1の紅が蹴ったボールだ。新人鬼が止められるはずがない。

席で見守っていた位の高い鬼達もざわつくほどだ。

「能力付きか…しかも能力レベルはとても高い…全方位ガードか?前世で何したんだよ…」

アオリもびっくりした。まさか自分にこんな能力があるとは思わなかった。

それから、何回も交互にPK対決をし、最終戦、0対0でアオリの攻撃になった。

止められるのはわかっていた。

アオリは右足で普通に蹴り、視線は左にあった。

キルは視線で左に構えた瞬間、右にサッカーボールがゴールに行った。

キルは慌てて右に足を動かすが間に合わなかった。

会場にいる客はもちろん、クラスの高いリーダー達も目が点になった。

そして、盛大にコロシアム銃が拍手に歓声に包まれた。

流石のキルも拍手をした。

アオリはずっと放心状態だった。

「降参降参!こいつアオリの勝ちだ!」

と、キルはアオリの右腕を掴み天に上げた。

「このアオリを迎えたいリーダーはいるか!」

位が低いリーダーから、高いくらいリーダーまでほとんどのリーダーが手を上げた。

そんな中、1人の女性が拍手をしながらコロシアムの最上階から出てきた。

「お見事、能力SSSクラスのアオリくん」

出てきたのは先ほどの綺麗な女性、『ムツメ』だった。

「ねぇアオリ、紅、入る?」

ムツメは笑顔で誘った。観客はますますざわついた。

アオリはどよめきながら言った。

「ぼ…僕、僕でいいなら!」

観客はまたしても拍手と歓声の嵐になった。

「新人鬼からまさかの約130年ぶりに紅に配属!!これは奇跡だ!」

キルはアオリに飛びつき、「仲間〜!仲間だ〜!」と喜んだ。

キルはハッとし、ポケットから紙を出した。

「これ!勝っても負けても渡そうと思ってたんだけど紅基地の地図!後できてね〜」

と、言ったキルは駆け足で会場を去った。


コロシアムに客が皆帰り、静まり返った夜、先ほどキルから渡された地図の目的地に行くため帰る支度をしていた。

すると、ボロボロになったバアジがアオリの元に来た。

「おいテメェ、いいこと教えてやるよ。紅は一部の鬼に嫌われている、いつテメェの命…いや角を狙われてもおかしくはねぇ。せいぜい、死なねぇようにな。まぁ、テメェが死んだ暁には俺が1番になってやるが…な」

アオリは心配そうに手を差し伸べるがバアジは手をはらった。

そのまま黙ってコロシアムの外へ行った。


アオリは地図を頼りに紅の基地に行った。

基地は一階建ての木造、とても広かった。目の前には天国につなぐ階段もあった。

玄関前には見知らぬ男性が立っていた。その男性はこちらに気づき向かってきた。

「クソ野郎、よくムツメ様の基地に来れたな。テメェが選ばれただなんて信じられねぇ、信じたくもねぇ…」

アオリは「誰ですか…」と小声で言った。

するとその男性はめくじらを立て

「紅になって俺の名前も知らねぇのか…!だが、ムツメ様に言われたから仕方がねぇ…自己紹介をしよう…」

アオリは困惑しながら聞いた、よく喋るなぁと。

「俺は紅所属ムツメ様の弟、『ムツキ』だ、お前が何かしてムツメ様が悲しまされたりしたら殺す…!クソ野郎、ついてこい」

アオリはクソ野郎扱いをされて呆れながらムツキについて行った。

基地に入り、ムツキがとある部屋をノックした。

「ムツメ様〜!野郎を案内してきました〜!褒めてくださいっ!」

完全にキャラが違った。多分このムツキはシスコンなんだろう。少し悲しんだアオリだった。





あとがき

3話閲覧いただきありがとうございました。

色々考えた結果、個人的な推しはムツキでしょうか。

実は、冬蘭ともう最終回まで考えています。だからって言うのもありますがムツキが好きです。

Twitterのアイコン描いたり楽しいです。

じゃあね〜!

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