4日目ーー経過観察
いつもより遠くから
小さな声で
「コンコンコン……あっ、起きてましたか? よかっ……あっ、いえ、眠れないのはつらいですよね」
カーテンをそっと開ける音
ベッドが軋む音
布団を擦る音
「はい。今日も特別回診。いつもの定位置に来ましたよ」
「手術後、1日経ちましたが今日の調子はどうですか?」
「……だいぶ楽? よかった。熱はーー下がったんですね。咳もーー少しだけ。うんうん、気持ちはどうですか? 気分は少しでもよくなりました?」
「……手術は終わったから。そうですよね。気持ちがだいぶ違いますもんね」
「順調みたいでよかったです。ここまで看護したかいがありました!」
手を両手で包み込むようにして握りしめる
「昨日も朝までずっといたんですよ。穏やかな寝顔、ずっと見てました。時々、いびきも出てましたけど、かわいかったです」
「……え〜そんな恥ずかしそうにしなくても。私の前では全部出してもいいですからね」
「この感じだと、予定通り明後日には退院できそうですね! よかった、よかった。美人幽霊看護師の看護も今日と明日の2日間です……(急に声のトーンが落ちて)そっか、私、あと2日間で……」
「はっ!? いえいえ、なんでもないですよ~。……悲しそうだったって? いや、まさか、そんなこと。患者さんが退院するのに悲しいなんて思う看護師いるわけないじゃないですか!」
「……は、恥ずかしいのであんまりこっちを見ないでください。……恥ずかしそうにしなくても、全部出してって? (小さな笑い声)それ、今私が言ったことじゃないですか」
「ありがとうございます。あなたって優しいんですね」
沈黙が続く
「……そうだ。昨日の続き、話してもいいですか? なにをって、昔話の続きです」
「どこまで話しましたっけ。……ああ、そうそう。いつも絆創膏を持ち歩いているすごい可愛くて優しい女の子が、ピッタリな仕事を見つけるところからですね」
「そう、女の子は天職とも呼べる仕事を見つけたのです。それは、病院の看護師でした」
「……え? わかってたって? まあまあ、そう言わずに」
「女の子と看護師の出会いは病院でした。女の子はある病気にかかり、病院に入院することになりました。女の子はとても緊張して不安もいっぱいでした。そこで出会ったのが天使のように優しい看護師さんでした」
「(記憶をたどるような感じに)病院というところはとにかく夜が怖いところでした。ヒタヒタと聞こえる誰かの足音。ときおりうなされる誰かの声。たまにすすり泣く声も聞こえてきました。ナースコールも鳴り続けるし。女の子は怖さのあまり、布団に潜り込んで耳を塞いでいたのです。そして、そんなときにーーって、あれ?」
布団を擦る音
ベッドが軋む音
耳元に移動して
「寝ちゃったんですね。今日も、お疲れ様でした。続きはまた明日。退院に向けてゆっくり休んでください」
少し離れて
「(悲しそうに)……明日で終わりなんですね」
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