2日目ーー検査
「コンコンコン、起きてますか〜? 美人幽霊看護師の特別回診です」
カーテンを開ける音
小さな笑い声が漏れる
「今日も眠れなかったんですか? ……いつもこんな早く寝てないって? まあ、確かにそうですよね。仕事もきっと遅くまで頑張って、ようやく帰ってあれやこれやいろいろしたら、もう遅い時間になっちゃいますもんね。うんうん、それでいいんですよ」
「さてさて、今日の検査はどうでしたか? 痛かったり具合悪くなっちゃいましたか? 大丈夫でしたか〜?」
ベッドへ腰掛ける
ベッドが軋む音がする
声が少し近くなる
「……そうですか。ちょっと大変だったけど頑張れたんですね! すごいです!」
小さな拍手の音
「……音は鳴らせるんだね、ですか? そうなんですよ。ちょっとだけなら物理干渉もできるんですよ。でも、なぜか人の体は触れられなくて。……きっと人間と幽霊同士交わらないようになってるんですね(少し悲しそうな感じで)」
「でも、検査乗り越えられました! これで慰める必要はーー」
「……でもやっぱり痛かったですか。そうですか。じゃあ、慰めます?」
布団が擦れる音
「わ、私、考えたんです。1日中考えていて思いついたんです。今話したように、人の体以外はちょっとの間なら触れるんですよ。だから、布団をこうして」
布団を剥がすような音
ゴクリ、と生唾を飲み込むような音
「さ、触れなくても。み、見ることならーー」
病室の扉がガラガラと開く
「はっ! 本当の看護師さんの巡回!」
急いで布団を被る音
少しの間沈黙が続く
カーテンが閉まる音
扉が閉まる音
耳元でささやく
「……行っちゃいましたね。……あの、すみません。やっぱり違う慰めにしましょう」
声が少し遠くなる
「今みたいなハプニングがあったら、私の姿は他の人に見えないみたいなので、あなたが一人で怪しいことをしてることに……。それにやっぱり入院中はよくないです。看護師なんですから患者さんの体調安全が第一! 誘惑に負けちゃだめなんです!」
後ろから声がする
「ということで。お話をしましょう。ゆっくり静かに話していれば、きっと眠くなっていくはずです」
「……そうですね。明日はいよいよ手術ですね。やっぱり心配ですか?」
「うんうん。全身麻酔ーーちゃんと目覚められるのか、ですか……」
「大丈夫ですよ。睡魔に襲われるみたいに眠くなって、終わったら起きている感じらしいですから。実質寝てるだけです。もちろん、体はきついと思います。だけど、それで辛くて眠れないようだったら明日も私がずっと側にいますからね」
「どんな話でもいいんです。病院の話じゃなくてもいろんなお話聴かせてください」
「他にはなにかーーああ、手術が成功するかどうかですね」
困ったような声
「こればっかりは私には何とも言えません。絶対成功すると言ったところで励みにはきっとならないでしょうし」
布団が擦れる音
耳元でささやく
「こんなふうに手をつかむことができればずっと手を握っています。だけど、私にはできないから、せめて添えるようにしますね」
「……そう、日中は姿を見ることができないんです。だけど、手術中もずっと側にいますからね」
「……今も眠るまでつかんでいてほしいんですか? わかりました。ついでに子守り歌や頭を撫でたりはどうでしょう」
「あっ、いらない。(笑い声を上げる)わかりました。手だけずっと握っていますね」
「……眠くなってきましたか? 大丈夫です。ゆっくり眠ってください。私はずっと側にいますから。そう、ゆっくり、ゆっくり……」
「(優しげな笑い声)寝ちゃいましたね。今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」
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