入院初日②

「……さて。一緒に退院まで乗り越えるぞ! ということで、それでは、まず退院までの日程を一緒に確認しましょう〜ええっと、確か日程表みたいなものがどこかにあったようなーー」


 机から1枚のプリントを取る音


「ーーあーそうそうこれです。はい、まずは今日、入院ですね。日勤の看護師から説明あったと思うんですが、6時半起床、夜9時半消灯です。私は、見ての通り深夜帯なのでだいたい深夜0時を回ったあたりで特別回診に来ますからね〜」


「あっ、眠たかったら寝てても全然構いません。起こさないようそっと来て、リラックスできるように子守り歌うたったり頭や胸を撫でたりしますから。……撫でられたら起きちゃうかもって? 冗談ですよ、幽霊ジョーク。幽霊が生身の人間の体をさわれるわけないじゃないですか」


「さて、次です。明日の予定は、さっそく検査が入っていますね。血液検査にCTにレントゲンに心電図ーーああ、手術前にだいたいやるやつですね。そして、明後日が手術、その次から経過観察して、手術を終えて2日後に退院ですね。今日から5日間の入院生活となります。よろしくお願いします〜」


 プリントを机に戻す音


「さて、不安なことはありますか? ……そうですか、やっぱりまずは明日の検査が気になりますよね。私が一緒についていけたらいいんですけど、私、夜しか見えない人間なので……」


「……うんうん、痛いかどうか? 具合悪くなっちゃうんじゃないかって?」


「うーん、そうですね~」


 パンッと手を叩く音


「じゃあ、こういうのはどうです? もし、具合が悪くなっちゃったら、明日の夜、私が慰めてあげます」


「……ああ! いえ! その慰めるってそ、そういうことじゃなくて。痛いところ優しく撫でるとか、えっとですね。だいたい体が無いんだからそういう慰めはできないじゃないですか! 話聴かせてもらう〜とかそういうことですよっ、もう。それに看護師にセクハラしたら強制退院で出禁ですよ!」


「……えっ? 話聴いてもらう以外にできること? た、確かに私は話聴くくらいしかできないですけど……わかりました! 何ができるか明日の日中じっくり考えます。あなたは検査、私は何ができるか考える。よーし、一緒に乗り越えましょう!」


「……少し眠たくなってきましたか? うん。大丈夫ですよ。たくさん検査があって大変だと思います。でも、絶対に終わりますし、ちゃんとここへ戻って来られますから」


 優しげな笑い声


 そっと耳元に近づく


「……それじゃあ、今日はおやすみなさい。また明日の夜に、やってきますね。いい夢見られますように」


カーテンを閉じる音

小さな声で子守り歌を歌いながら部屋から出ていく

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