花はゲームには詳しくない

 花は普通の紙巻きタバコを愛用しておりますよ。

たまに手巻きタバコもします。

昔はシャグ(刻みたばこ葉。これを紙に巻いて吸う)は、専門店かネットで買っていましたけど、今はコンビニで買えるから良い時代になったものなのですよ。


しかーし。

時の隆盛りゅうせい

周りは圧倒的に加熱式タバコユーザー。

花にも変えろ変えろとの圧力。

やんややんやの攻防戦。

髪を鷲掴わしづかみにしメンチの切り合い。

飛び交う怒号。

落ちる涙。

逃げ惑う人々。

それを見てほくそむメーカーセールスマン。


なんて事は無いのですがね。


 「花も加熱式にしなさい」

ってすごーくすごーく言われるのですよ。

花はこだわりが有って今の銘柄を吸ってるのでね。

廃盤はいばんにならない限り変える気は無いのですよ。


そんな花も加熱式の販促ブースを見つけるとキャッキャとします。

タダでタバコが吸えるぜ。

なのですよ。


 売り込みに対する花の決め台詞ぜりふ


 「あーこれじゃ満足出来なくて絶対にチェンスモしちゃうからトータルで色々と意味ないっすね」


(チェンスモ。チェーンスモークの略。間を空けずに次のタバコを吸う行為)


ニコチンがみるぜ!

なのですよ。


 そんな花なのですが、半月ほど入院していた事がありましてね。

あねさまに退院のお迎えに来てもらったのですよ。


姉さま 「うぃーおつかれー」


花   「タバタバー」


姉さま 「薬とか寄るとこあんの?」


花   「タバッ」


姉さま 「無いって事か。とりま行くか」


花   「タバタバー」


姉さま 「入院どうだったよ?」


花   「タバータバタバー」


姉さま 「入院したら花がピ◯チュウみたいにしか

    喋らんくなった。入院ってやべぇな」


花   「タッタバタッ」


姉さま 「どっか寄りたい所とか無いん?」


花   「タバタバタバタバタバタバタバタバタ」


姉さま 「おけおけ。どっかコンビニ寄るわ」


花   「ターバッ」


姉さま 「駐車場有るコンビニ無いねー」

    「多分この先も無さそうだけどアパート帰

    って良い?」


花   「た…ばぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」


姉さま 「昔のゲーム機のコードがビーンッてなっ

    た時みたいなバグり方するじゃん」


花   「タバァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙」


姉さま 「分かった分かったとりあえずこれ吸って

    我慢しとけ」


姉さまの加熱式タバコを手渡されました。


 花は


「ふんっこんなの何の足しにもならないわっ」


などと思いながら二口ほど吸って吐いてしました。


姉さま 「どうよ?久しぶりのタバコは?」


花の両の目には今にもこぼれんばかりの涙が溜まっておりました。

花は景色の流れる車窓に頭をもたげます。

そして遠い目をしました。

世界がキラキラ輝いて綺麗に見えます。

街の喧騒も今ばかりは違っている様でした。


 深く吸い込んだ加熱式タバコの蒸気を吐き出しな

 がら姉さまに答えます


  「ふぅ………………………………きちゅい」


キツくてそれ以上吸えませんでしたね。

まぁ二日ほどで元通りでしたが。


 花は思いました


「平成のゲーム機のコードには気をつけろ」と。

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