花は味をしめる
猫さんを育てるに当たって。
ミルクは昼夜関係なく二〜三時間置きに。
その都度、おしっことうんちも促してあげます。
日常生活を送っていたらかなり厳しいのですよ。
ですので日中は母と言う生き物にお願いして。
夜間は花の担当なのですよ。
ですので当時の同居人に花は言ったのですよ
「これこれこうゆう訳だから、しばらく母の家で寝泊まりするね」
すると同居人は言いました
「それは、ダメだ、自分が淋しい」
花は思いました
「おい…、お前…、ふざけるな…よ?」
猫さんたちの面倒をみながら、おまえの面倒もみろだと?
自分に置き換えて物を言え。
なのですよ。
しかし、そんな事言えず。
この日から花の不眠不休の生活が始まったのですよ。
ミルクも排泄も四匹ともなると、少し手こずるだけで気が付けばもう最初の子の次の時間がきてしまうのですよ。
夜間、寝ずの猫さんのお世話。
日中はお仕事。
自宅に帰宅。
炊事家事を済ませる。
同居人を寝かし付ける。
また寝ずの猫さんのお世話。
花はこの時、生まれて初めて歩きながら寝ていたのですよ。
自分でも驚きましたです。
しかーし。
やはり限界が来ましたね。
花はおっかなびっくり猫さんをアパートに連れ帰る事にしました。
ゲージを抱えてあっちに行ったりこっちに行ったり、時には会社にも。
いつも腕はパンパンでしたね。
それでも二十週を過ぎるくらいで、ミルクの飲む量の増加と共に、次までの時間も長くなります。
やっと少し眠れるのですよ。
しかーし。
猫さんたちはお母さんのおっぱいの代わりを求めて、ひたすらにちゅうちゅうします。
花の手を。
良くしたもので、同居人には行かないんですよね。
これ、ずーっと同じ場所をちゅうちゅうされてると無性に嫌になるのですよ。
しかもちょっと生えた歯が絶妙に痛いのですよ。
仮眠をとりたい花。
ちゅうちゅうする四匹。
花はこうなりました
「ふぇあぁ、へにゃぁ、ほぉひゃぁ…セイッ」
はい、すみません。
ぶん投げました。
もう色々と限界だったのですよ。
まぁ実際はぺーいって布団の上に放り投げたんですけどね。
そして元気にまたちゅうちゅうしに直ぐ来たですよ。
ミルク離れが済んでもこの癖はどの子も抜けなかったですね。
獣医さんも内心は、毛がほとんど無かった子はダメかな。
と思っていたそうですが、何とかみんな元気に育ったのですよ。
そして里親さんも見付かりましたです。
この時ですよ。
例の同居人があーだこーだ言うのですよ。
どんな人が里親かちゃんと見極める。
花は思いました
「おめぇ自分はただ可愛がって、ミルクの一つもあげたことねぇだろ、中途半端に可愛がって、親気取りか、おい」
とは言えず。
里親候補のお一方はこの同居人の身勝手な熱量に怖気づいて辞退されたのですよ。
なんか、ほんと、すみません。
二匹の引き取りが決まり、譲渡日。
今までの病院代、ワクチン代払います。と言って下さるとても優しい方でした。
花は寂しさを誤魔化す為もあって
「大丈夫ですよ。不安で暴れちゃうかもしれないので早く行って下さい」
とお見送りしました。
見えなくなるまで見送ったですよ。
そして花は阿呆ほど泣きましたです
「うぐぅ、おぐぅ、ぶひぃ、ひぐぅ、ゔぇっ」
そんな花を見て同居人も言いました。
「そんな泣くくらいなら里親なんか出さなければ良くない?決めたの自分でしょ?だったら泣く意味分かんないだけど」
花は泣き虫を治さなきゃと思ったのですよ。
そしてこれ以降、花はせっせと段ボールを運ぶ事になるのですが、それはまた違うお話し。
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