第1回『平原の掃除屋・スライム3』
スライムを追いかけてしばらく経った頃。
我々取材班の目の前を這いずって移動していたスライムが、一瞬止まってあたりを伺うような動きをした後、突然今までとは違う方向へと飛び跳ねて移動を始めたのです。
「これは……急いで追いかけましょう」
その様子を見た博士が、我々取材班にそう告げるのと同時にスライムの後を追いかけだしました。
我々もあわててスライムの後を追いかけますが、飛び跳ねて移動するスライムは思っていた以上の速度で移動していきます。その速度は、我々大人であっても小走りで追いかけなくては遅れてしまうほどです。
「意外と思うでしょうが、魔力の消費を考えなければスライムは結構な速度で走ることができるんです。
今まで確認された中で最速のスライムは、馬と同じ速度で移動したらしいですよ」
スライムを追いかけながら、博士はそんな解説をしてくれました。馬と同じ速度で走るスライムというのはさすがに想像しにくいですが、実際に目の前を跳ねて移動するスライムを見れば、あながち嘘とも思えません。
しかし、なぜスライムは急に素早い移動を始めたのでしょうか。
まさか我々に気づかれてしまったのか、そう思ったのですが――。
「いえ、おそらく食糧を感知したんだと思います」
食糧という言葉に、我々はピンとこずに首をかしげます。
魔力を吸収して生きているスライムが、食べ物が必要となる姿が想像できなかったからです。
「それは誤解ですよ。食事というのはモンスターにとって、もっとも効率よく魔力を吸収する手段のひとつです。
魔力を宿している物を食べることで、宿す魔力を直接吸収することができますからね」
モンスターが人間を襲って食べるのも、食べて腹を満たすというだけでなく、魔力を吸収する目的も含まれているのだそうです。スライムだけでなく、これはあらゆるモンスター共通の目的だと言われています。
つまりスライムにとっても、何かを食べるという行為は、魔力を吸収する行為とイコールになるわけです。
「特に魔力に乏しい平原で生きるスライムにとって、食事による魔力吸収は最優先すべき行動です。
だからこそ、獲物を奪われないように急いで移動を始めたんでしょう。あ、ほら……見えてきましたよ」
博士がそう言って指さした先には、ボロボロになったスケイルウルフの死骸がありました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます