二章。その4『ま、まさか先輩?としか思えないのですが?。』

「はい。なんでしょう。」

「その、とても言いにくいのだけど。」

 なんだ?この人に言いにくいことがあるのか?あの今日みんなが跳ね起き、姿勢を正してしっかりと初日でさせたあの花園先輩が?。

 そこでもしかしたらやばいことではないかと勘付いた俺は心を入れ替える。

「……………私と、私と付き合わない?」

 そう赤面しながら言ってそうな声ながらもはっきりと伝える花園先輩。

「え?」

 いきなりすぎて意味がわからない。

 だって今日会って2回目だけどほぼ初対面みたいなもんだぞ?、そんな俺になんで求婚みたいな感じで求告してるんだ花園先輩は?。

 動揺とか恥じらいとか色々な感情が混ざり合って何を話したら良いかわからない。

「な、なん、なんで、そんないきなり告白してくるんですか?」

 かっこよく言おうと思ったが、吃った。

 そんな俺が少し恥ずかしいが、それと同時に初々しさもあってエモい。

「だって、三ヶ月くらい前でしたっけ?助けてくれたでしょう。』

 と、例の一件のことを話し出した。

「あぁ〜そんな事もありましたね。」

 そんな事もあったな、と思った。だがこれだけで好きにはならないはず。好感度は多少上がっても好き、までは届かないと思う。

「そ、それで、今日入学式があったじゃない?、その時に、私挨拶したの。」

 あゝその記憶は今でも染み付いている。

 あのリーダーシップをどれだけ学んだんだってくらいまとめれている会長だったからな。 

「そ、それであなたがいたじゃない?そのおまけに、帰りに下駄箱で会う……………これ絶対に運命じゃないかしら。それに、わ、私だってそう言う、少女漫画みたいな恋もしてみたいわ。」

 電話越しにも伝わるこのデレデレとした声。

 そうだ。助けた人の挙句遂には学校まで同じとなると、それは運命を感じるだろう。しかも、花園先輩が少女漫画みたいな恋がしたいだと、こ、これはなんかズルい。

「気持ちは嬉しいんだけど、俺、多分もう好きな人います。」

 そう、俺は初日ながらも、いきなりあの凛としてクールな声の人にどきりとさせられてしまった。だがこれは好き、なのだろうか、顔も見てないし、なんなら話した事もない。これを人声惚れと言うやつなのだろうか、まぁそんな言葉存在自体してないが。

「な、なんで……………なんで駄目なの?そ、それに好きな人って。誰?」

 涙声で、ポタポタと、液体が流れる音が聞こえる。

 悪い事をしたのだ、と言う罪悪感と、はっきりと言えた事へ少しの雄々しさを感じる。

「駄目っていう事はないけど、その、今日入学式の時、次に話を移す人?あのありがとうございました。次に◯◯さんお願いしますみたいな、そんな人いるじゃん?その人の声が好きで、初日に人声惚れしちゃったんだ。顔も見た事ないのに、俺って変だな。」

 そう正直に伝えた。 

「"⁉︎ "」

 花園先輩がそこで泣き止む…………どころか、なぜか笑い声が聞こえる。

「ははーんそれでその子の事好きになっちゃったという事ですか?。」

 いきなりだな。

 急にオトナの余裕を見せた声にかわる。 

 だけどなんでこんな変わったんだ?自分が好きな人が他人にでも取られてほしいとかいう趣味なのか? 

「は、はい簡単にいうとそんな感じです。」

 理解が早くて助かる。よしこのまま、だから無理今もこの先も、と言おう。

「その女の子の名前。教えてあげようか?」

 それは普通に聞きたい。だって好きな人の名前だよ?普通知っときたいもんでしょ?あっ普通は知ってるのが前提か。

「は、はいお願いします。」

 真剣な声へと変える。

「分かった、じゃあ説明しますよ?」

 少しうきうきしているのが電話越しに伝わる。

 本当にこの人そういう趣味してるんじゃない?

「あ、その前に、その子の雰囲気とか、見た目とか性格諸々説明するよ?」

「雰囲気は少し大人っぽくて、でも本人はどうして大人らしくなっちゃうのか知らない。」

 大人らしい、よしメモメモ、

 メモ帳を取り出し、新しいページを開く。そしてそこら辺にあった鉛筆を拾い持つ、そうして大人らしい、と書き入れた。

「あと見た目。見た目は第一印象に身長が小さくて、146センチ、バストはそこまで大きくもないが小さくもない、まぁ普通くらいかな?そして、髪の毛、みんな黒なんだけど、その子はなぜか少しだけ茶色い髪が入ってるの。」

 ふむふむと頷きながら、メモ帳に淡々と書き込んでいる。好きな人のことだから、書いていても億劫にならない。

 だが、そこで一つ疑問が起こる。それは今の時点でとても花園先輩に類似しているからだ。その大人らしさも身長の小ささも、地毛じゃないんじゃないか?って思う茶髪。

「最後に、性格、…………………わからないわ。その子の性格は私にはわからない。いいえ知ることができないわ。」

 ん?わからない。しかも挙句の果てには知ることすらもままならないと述べている。

 これは。俺は一つの結論にしか導けなかった。

 それはその声の相手が花園先輩であることだ。

 そんな事は絶対にない、と思いたいがさっきの行動からこの人なんだといやでも思わせてくる。その声の人が好きと言った直後にははーんとしたような声に、急なオトナの余裕。これが嫌でも頭に残る。

「その、この条件だと、花園先輩先輩としか、思えないのですが……」

 とりあえずきいてみよう。

 そう思い質問した。

「そう、よく分かったね。結城くんが鈍感なら最後に名前のところで言うつもりだったもん。」

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