二章。その3『そして迎えた"夜"の通話。1』
首を少しだけあげて、腕を組み、なぜか自慢げな顔をしている。
なんでそんな自慢げ……?と思いもしたが、その答えは表情を見ればすぐにわかった。
その得意げな顔の奥、本当に少しだけ、笑顔と達成した感がある。なんでわかるかって?だって話せはしなかったけど、観察はしてきたから、ストーカー級に……
「あぁはい、しましょうか?」
ポカーンとした。
正直意味がわからない。なんのために?意味は?と聞こうとしたが、そう言うもんなんだと結論付けたのでやめておいた
。
『それで、私達は、日々の出来事を話し合いますの。いわゆる情報交換みたいな感じです。
……………面白そうでしょ?』
得意げな顔からどんどん顔が崩れていって、遂にはスライムのようになっているが、行った方が良いのか?。
そんなことよりも、二人だけで夜の通話……エモくね?
二人だけとは何処にも定義してないけど。だけどこの展開からして絶対二人でだよな。そう絶対………絶対………
『あぁ〜良いですね。楽しみです。』
とりあえずの意を示して同意。
これから毎晩連日通話を行うのだ。そして今日あったような出来事、まぁ、なんでも良いだろう。好きなアニメやら、漫画やら、
時々愚痴を叩くのも良いかもしれない。人間にはいずれも起こりゆくことだ。
まぁ今晩どんな話をするだろうか。
まさか説教?いやでも自分的には何もしてない。
問題は夜にならないとわからないことだ。
*
迎えた夜。
静かな夜だ。夏でもないので、虫は鳴かないし、話もしない。だが何処かでその虫は今も生きているのだろう。人間と同じく生きているのだから、その血は必ず何処かには受け継がれているだろう。なんでこんなに賢そうな言葉かって?そりゃ今俺が賢者タイ……
などの事を考えていたら、一通の電話が鳴り響いた。
電話は、花園先輩からのものだった。
そう言えばそうだ。毎晩話す事を約束したのだ。
そんな事を考え電話に出るようにスマホをスワイプされる。
『ちょっといつまで電話かけてこないのですの?』
そんな事を言われてしまった。
電話越しでもわかる、このおねぇさん感満載の声に、ちょっぴりの御怒りの印象を醸し出す声、すぐにこの声は遥先輩のものだとわかった。
「ああ、すみません。少しだけ用事がありまして。」
もちのろん、そんなことはないてかありえねぇ。
「用事って?」
今日の学校終わりにもあった、ぽかーんとした顔が見えないのに伝わる。
いやまじでねぇけどどうしようかな……あっ、文房具を買ってきたことにしよう。高校生になったし、一気合い入れようと思ってとかなんとか言えば理屈もつく、よし、そうしよう。
「その、文房具を買いに行ってたんです。高校生になって、一気合い入れようかな、と思いまして……」
予定通りに答えた。
『あれ?ここら辺文房具屋さんありませんよね?』
あ、しまった一番大事なこと忘れてた。そう言えば、ここら辺に文房具屋さんなんてものは存在すらしていないのだ。
俺の顔が青ざめたような気がする。自分ではわからないが、多分やばいくらい青ざめているだろう。
「あ、えっと……………そうだ、フクザワスーパーあるじゃん?あそこにシャーペンのクルトがあったから、ついつい買っちゃったよ。」
よし、確か、フクザワに文房具店はあったはず。そして具体的な購入物をあげることでより信憑性をあげる。最高の考えた。
「あれ?確かフクザワにはクルトガ系統のものは置いていませんよ?」
あ、終わった。もう嘘もつけない。
く、これは正直に答えるしか…………ないのか。
さっきの顔の青白さを多分超えたな。もう絶対死んだ顔してるだろ俺。
「はい、えーと大変良いにくく、申し訳ないのですが……………普通に忘れてました。ハイ。」
あぁもう全部ぶちまけた方が気持ちいいわ。これ。
俺の顔が死んだ顔から、多分少し青白いくらいになったと思う。
「もー最初からそう言えばいいのに、忘れたくらいで私は怒ったりしないわ。だけど"私は"だからね?他の人は多分怒るわよ?」
そんなことかと言ったような声つきをしながらも、やはりおねぇさん感を醸し出す。
忘れた上に嘘までついたのに許してくれるって、天使かよ。
「それで、話は本題に入るけど。」
いきなり真剣な声へと変わった。真っ直ぐ透き通った声だ。
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