二章。その3『そして迎えた"夜"の通話。1』

首を少しだけあげて、腕を組み、なぜか自慢げな顔をしている。


 なんでそんな自慢げ……?と思いもしたが、その答えは表情を見ればすぐにわかった。


 その得意げな顔の奥、本当に少しだけ、笑顔と達成した感がある。なんでわかるかって?だって話せはしなかったけど、観察はしてきたから、ストーカー級に……


「あぁはい、しましょうか?」


 ポカーンとした。


 正直意味がわからない。なんのために?意味は?と聞こうとしたが、そう言うもんなんだと結論付けたのでやめておいた

『それで、私達は、日々の出来事を話し合いますの。いわゆる情報交換みたいな感じです。

 ……………面白そうでしょ?』


 得意げな顔からどんどん顔が崩れていって、遂にはスライムのようになっているが、行った方が良いのか?。


 そんなことよりも、二人だけで夜の通話……エモくね?


 二人だけとは何処にも定義してないけど。だけどこの展開からして絶対二人でだよな。そう絶対………絶対………


『あぁ〜良いですね。楽しみです。』


 とりあえずの意を示して同意。


 これから毎晩連日通話を行うのだ。そして今日あったような出来事、まぁ、なんでも良いだろう。好きなアニメやら、漫画やら、

時々愚痴を叩くのも良いかもしれない。人間にはいずれも起こりゆくことだ。

  

 まぁ今晩どんな話をするだろうか。


 まさか説教?いやでも自分的には何もしてない。


 問題は夜にならないとわからないことだ。


 



 迎えた夜。


 静かな夜だ。夏でもないので、虫は鳴かないし、話もしない。だが何処かでその虫は今も生きているのだろう。人間と同じく生きているのだから、その血は必ず何処かには受け継がれているだろう。なんでこんなに賢そうな言葉かって?そりゃ今俺が賢者タイ……


 などの事を考えていたら、一通の電話が鳴り響いた。


 電話は、花園先輩からのものだった。


 そう言えばそうだ。毎晩話す事を約束したのだ。


 そんな事を考え電話に出るようにスマホをスワイプされる。


『ちょっといつまで電話かけてこないのですの?』


 そんな事を言われてしまった。


 電話越しでもわかる、このおねぇさん感満載の声に、ちょっぴりの御怒りの印象を醸し出す声、すぐにこの声は遥先輩のものだとわかった。


「ああ、すみません。少しだけ用事がありまして。」


 もちのろん、そんなことはないてかありえねぇ。


「用事って?」


 今日の学校終わりにもあった、ぽかーんとした顔が見えないのに伝わる。


 いやまじでねぇけどどうしようかな……あっ、文房具を買ってきたことにしよう。高校生になったし、一気合い入れようと思ってとかなんとか言えば理屈もつく、よし、そうしよう。


「その、文房具を買いに行ってたんです。高校生になって、一気合い入れようかな、と思いまして……」


 予定通りに答えた。


『あれ?ここら辺文房具屋さんありませんよね?』


 あ、しまった一番大事なこと忘れてた。そう言えば、ここら辺に文房具屋さんなんてものは存在すらしていないのだ。


 俺の顔が青ざめたような気がする。自分ではわからないが、多分やばいくらい青ざめているだろう。


「あ、えっと……………そうだ、フクザワスーパーあるじゃん?あそこにシャーペンのクルトがあったから、ついつい買っちゃったよ。」


 よし、確か、フクザワに文房具店はあったはず。そして具体的な購入物をあげることでより信憑性をあげる。最高の考えた。


「あれ?確かフクザワにはクルトガ系統のものは置いていませんよ?」


 あ、終わった。もう嘘もつけない。


 く、これは正直に答えるしか…………ないのか。


 さっきの顔の青白さを多分超えたな。もう絶対死んだ顔してるだろ俺。


「はい、えーと大変良いにくく、申し訳ないのですが……………普通に忘れてました。ハイ。」


 あぁもう全部ぶちまけた方が気持ちいいわ。これ。


 俺の顔が死んだ顔から、多分少し青白いくらいになったと思う。


「もー最初からそう言えばいいのに、忘れたくらいで私は怒ったりしないわ。だけど"私は"だからね?他の人は多分怒るわよ?」


 そんなことかと言ったような声つきをしながらも、やはりおねぇさん感を醸し出す。


忘れた上に嘘までついたのに許してくれるって、天使かよ。


「それで、話は本題に入るけど。」


 いきなり真剣な声へと変わった。真っ直ぐ透き通った声だ。

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