二章。その2、『毎日"夜"に通話しましょうよ。』

この学校はマンモス校だ。田舎では、類を見ないほどに大きく、また、他にこの規模の高校はこの県には存在しない。それと比例しているのか、一学年のクラスも12組もある。もうふざけちゃってるよね。

『では、時間を取るのでクラスの人と話しましょう。』

 話は淡々と進んでいった。先生の自己紹介。先生は藤宮 刹那と言うらしい。若い先生で25〜6くらいだろうか、

 パーマにボブ、タワワに実った小さく膨らんだものは、そっち系の層の人に刺さりそうだ。

 それはそうと、クラスの人と話す……言ってしまえばここで友達の関係、クラスとカーストが決まってくる。そこで俺はオタクそうな人に話すことにした。何故かって?そう俺は稀に見るオタクだからだ。基本乃アニメ、ラノベ、漫画を網羅している。つまり話が合うかもしれない。そうなれることが一番幸せだ。

 ふとクラスを見渡す。そうしたら

『……………』

 いや全然オタクっぽい人いねぇじゃん。

 え、隠れオタク?そんなの知りましぇぇん。見た目でオタクを判断できないのは辛すぎる。と言うか地獄だ。

 最悪。新しい友達できないじゃん。

 これでカーストも5、6軍かな。あぁつらいよ俺は。

 それはそうと、新しい友達?って思ったでしょ?

 そう。自分、結構頭良いんだよね。なんせオタクだから。学校行っても他にすることないし、言ってしまったら勉強しかする事がない。

 だが幸いにも他クラスに友人がちらほら。それに同じくオタクのため、すぐに仲良くなった。だが話すことは学校では少なく、家にいる時にラインでしか話せていない。話す機会がないから……。

 その友達二人が、春ヶ丘高校に入学してくれた。しかも、な、な、なんと同じクラスに、その友人二人が?いや最高よ………

 今度は同じクラスだから、話す機会も設けられるし、それにぼっちにもならない、だが唯一の弱点……欠点と言うべきだろうか、その友達がまさかの両方女の子、挙げ句の果てには美人と来たものだ。

 そのため。

『ねぇ君?名前は?可愛い顔してるね〜』

 など今質問攻めに合っている。モテたはモテたで辛いんだな。初めて知ったわ、

 そんなことより、どうして俺はこんなにも話しかけられないかな。辛い、もう泣きたい。だがそんな気持ちもグッと堪える。そんな俺エモ……くはないな……

 まぁ友達なんてこの一年で作れば十分でしょ。きっとこんなマンモス校なんだから

 絶対気の合う人の一人や二人必ずいるだろう………いるよね?



 *



 学校が終わった。結局一人も話しかけられなかった。話そうとしてもどっかいってしまうし、話している最中に割り込むのもどうかと思う。俺って結構臆病?臆病者なのか?

 そんなことはどうでも良い、だが今一番困っている事がある。

『"ねぇ結城、一緒に帰ろう?"』

 そう言われる自分がいた。

 誰に言われたかっといったらそれは例の美女だ、しかも二人、二人して美女、凄いな一人は神内 環奈、艶やかな髪でロングが印象で、しかもロシアンハーフ、銀髪と来たもんだ、銀髪美女、うん最高。

 もう一人は山内 茅、純血日本人、髪は黒のセミロング、ウルフヘアー純日本人いったが日本人とは思えないほどに色白でバストもかなりの代物、なんかコメントしずらいな、話は変わるが、何故急にそんな事を言われたのだ?と思ったが、周りを見たら頷けた。

 それは二人が人に絡まれていたからなのだ、クラスのよく知らん男女が彼女らを

 囲んでいて辛そうだった。確かに環奈も茅も目で何かを訴えようとしていたがまさかそれとは思いもしなかった。

『うん、じゃあ帰りますか、環奈、茅、』

 そう言い、環奈と茅の手を引っ張って、逃げるように歩く。そう歩いていると、後ろでこのような事が聞き取れた。

『なんであんな奴と一緒に帰るんだよ。ただの陰キャじゃねぇか、』

 うーん、仏の顔は2度までと言うが、一度でもうキレそうになるのは俺だけだろうか、何があんな奴だ何が陰キャだコラ、こっちだってなりたくてなってるわけじゃねぇんだよ。全く最近の若いもんはそこら辺の理解ができないから困るわ。

 まぁそんなことはどうでも良い。早く帰ろう。少し小走りにし、彼女らも察してくれたのか、歩く速度を速める。

 そして、下駄箱についた。

 玄関、と言うこともあるが、途轍もなく広い、一年の下駄箱だけで三列くらい使われている。

『あ、ありがとう、』

 そう環奈がいう。狩人から逃げ切った猪のような安心感に浸っているのだろう。

 同じく茅もそうだ。疲れた顔をしながらも安心感した顔をしている。やはり茅は運動が苦手、ということもあり、こんな短距離でも疲れてしまっているようだ、

『はぁ、はあ、ありがとうね、結城くん、怖かったわ。』

 そう茅が告げる。汗が額に滴り、それが太陽に反射して、なんかエモい。

『いやいや、そんなことないよ、それより大丈夫だった?怖くなかった?ったく人と話す事が苦手な二人に限ってなんで話すかなー?』

 ちょっとお兄さん感出てるが良しとしよう。なんで話すかなーっともいったがまぁ分かりきっている。だが場の空気的にそう疑問系で言っておいた。

『よし、じゃあ帰りますか。』

 そう言い、互いの下駄箱から下履を取り出して、踵を踏まないように履く、

 そのままゆっくりと校舎を出た。

 前には人物像が立っている。なんだっけ、あの歩き本してる奴、あれ、今やったら怒られるかな?と思いつつも一歩踏み出す。

 その瞬間。

『結城くん……』

 何処からかそう言われた。何処だ?と思い、右左をぐんぐんと首を振る。

 そうしていると、後ろからトントン、と肩を叩かれた。

『ここだよ結城くん』

 横にいた彼女は少しびっくりしていた。なんせあの生徒会長が俺に話しかけてくれているのだから……だからなのか分からないが何かを察したように環奈と茅は、『じゃね、』、『また明日。』と、"バイバイ"をする。一緒に帰るんじゃなかったのかよ。

 そう思いつつ後ろにいた生徒長……………花園遥はこちらをジロジロと見ていた。

『おぉー本当に結城くんですね』

 彼女はニカァァと、満遍の笑みを浮かべながらいう。

 ここで俺が少しドキッとしたのは気のせいだろうか。

『あぁはい、結城です。あの初っ端から申し訳ないんですがこの度は申し訳ございませんでした。』

 取り敢えず謝る。何故かって?だって助けた人が先輩でそれなのにお兄さん感出して、タメ口……普通にダメだろ。そう思い謝った。

『なぜ謝るのですか?私を助けてくれた恩人なのに、』

 そう言う花園先輩は頭からハテナマークが出るんじゃないか?ってくらいぽかーんとしている。

『いや、その、先輩が辱められている所を見た以上にタメ口で話すなど。色々な罪を犯してしまいました。本当にごめんなさい。』

 もう一度謝り上半身を45度傾ける。

『いやいやそんな、辱められてるのを結城くんが見てくれたから警察に通報できたのだし、タメ口だって見ず知らない人ゆえに使ってしまったのでしょ?そんなこと今先輩って知ったからってそんな失礼な奴だなんで思いもしません。』

 そうおねぃさん感を出しながら伝えられるとなんか気が休まる。ありがとう本当に。

『そこまで言ってくださるのなら。』

 笑みを作り上げ、顔でありがとうを伝えようとした。果たして伝わっているだろうか。

『あ、あとそうでしたわ、ライン交換しましたよね?この前?』

 そうラインの友だち、と言う欄を見せてくる。そこには俺がいた。

 あっそうそう確か交換したんだあの時。

 記憶がフラッシュバックする。

『あーそう言うこともありましたね。それがなんですか?』

 急にそんな話されても……と思い至ったので尋ねた。

『あれから私達連絡取ってないわよね。』

 彼女か、スマホをしまい、俺の正面でしかも超がつくほどの近距離でそう言ってきた。

『あ、はい、そうですね。』

 目も逸らせない。そのくらい近い。なので少しの動揺が混じってしまった。

『本当は私あれから連絡をとりたかったの。』

 そう次は俺の胸ぐらについているネクタイを持ちながら言う。

 にしても、衝撃の事実、生徒会長であるあの花園遥さんが俺と?ラインでやりとりしたかった?やばいなんか緊張してきた。

『そ、そうなんですか意外です。』

 その緊張のあまり、思いもよらないような形で答えてしまう。

『だからさ、』

 遥さんが胸ぐらを放し。二歩くらい下がっている。

 そうして。

『毎日、夜に連絡を取り合いましょうよ。』

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