第一話 帰ってきた世界ですべきこと

しばらくして...

「よし、行く準備はできたよ。」

「...君は行くの、行かないの。」

こうなったら行くしかないだろ。

「行く。それなりの覚悟はできた。」

そう答えて、私たちで肩を組み合って円になった。

「これで、どうするの?」

「目を瞑って、元いた世界のことを思い浮かべてごらん?」

「...。」

言われた通りに、今までいたであろう世界のことを思い出して目を瞑った。

すると、急に体が重くなった気がした。

そして、気がつくとそこは私の部屋の中だった。

「ここが、地球か。」

「...誰かの部屋だと思う。」

誰かの部屋だと言うことは合っている。ていうか、なぜわかった。

...でも、ここに戻ってきても記憶は元に戻らない。なぜだ。完全に消えてしまったのか...?

『名前』だけ...?そんなことがあり得るのか...?

まあ私は元々『小笠原 海月姫』という名でVTuber活動を行っていたが...。

ていうか何故私のVの名前はわかって自分の名前はわからないんだ。おかしいだろ。

「まあ、ここは私の部屋だよ。ゆっくりしていってね。まあ、ここにいるのは私だけだけど、ね。」

水瀬姉妹からしては、ここは未知なる世界。だからこそ、些細なことでも紹介しておいたほうが少しでも役に立つのか。

「...君はこの世界を平和にしたい、そうだよね。」

「う、うん...。」

いきなり確認を取らされた。もちろん私の答えはYESだが。

「...この世界を詩で平和を作るには、かなり難しいわ。」

かなり難しいのは重々承知の上だ。

「覚悟は、いいわね?」

やっぱり聞いてきた。

「うん、平和になるなら私も頑張る。」

「...それならいいわ、ついてきて。」

ついてきてと言われたので、後を追った。

すると、あかりは空を指さした。

「この世界は『無線』で繋がってしまっている。」

無線...?インターネットのことか...?

「そう、『無線』。今までの世界は自分たちで『無線』を作り上げたけど、ここの世界はすでに汚らわしい『無線』で覆われているから。」

つまり、この世界はインターネットに繋がれていて、その中には、アンチや暴言厨がいるから、統一するのが難しいってことか。

...というか、地球になぜインターネットが存在するとわかったんだ。

パソコンもつけられていないし、どういうことだ。

彼女らには、何かわかるのか。

「とにかく、試さなきゃもったいないじゃん。」

...まあそれはそうだが、不思議で不思議で、仕方がない。

この謎は、いつ解けるのだろうか。

私の名前を思い出すときと同タイミングなのだろうか。

まあ、いずれ解けるであろう...。

「そうだね。」

私は、そう返すことしかできなかった。

「とりあえず、詩の材料を探すため、どこから探しに行く?」

詩の材料、か...。

「とりあえず、砂漠の方から...」

話を続けようとした、その時だった。

「っ!?」

「ぐあああああああああっ!?」

突然頭痛に襲われた。しかも、今までに感じたこともない痛みだ。

そして、目を開けてみると、涙で歪んではいるが、私と水瀬姉妹が大惨事に合っている光景が目に見えたような、そんな気がした...。

「君、大丈夫!?」

とっさにはるかが駆けつけてきた。

「私は、大丈夫...。うっ...。」

「無理しないで。安静にしておけば、そのうち引く。」

たしかに、安静にしておけばそのうち痛みは引くであろう。ただ、そこで見た光景は、未来...なのか...?

「うん...でも...。」

「...。」

「嫌な予感。君たちと合ってからずっと嫌な予感がする。」

「...え...?」

そういったら、はるかは黙ってしまった。でも私は、そんなの構わず、話を続ける。

おそらく、嫌な予感がするといった瞬間、ショックで黙ったのだろう。

「私は、今の頭痛で、わたしたちの未来が見えた気がする。」

「...その内容は、どうだったの...?」

そう聞かれると、言いたいがとても言いたくなくなってきた。

なぜなら、いきなり『死ぬ』って言われると、固まると思ったからだ。

「...隠さず、全部言って。」

あかりから言われると、流石に言わなきゃなと思う。

「...私達は、燃え死ぬ。」

「...!?」

やはり固まったか...。そりゃそうだよな...。

「それは、確かに見えたものだった。」

「あの頭痛で、少し涙が出てて霞んでいたが、目の前に見えたのは私達が街で炎に飲まれて死んでいく姿を見た...。」

「...。」

「君を、信じるしかないね。」

「...作りたいものができた。少しパソコンを借りていい?」

「わ、わかった。」

そう言ってパソコンを貸すと、何やら小型の機械を取り出してプログラムし始めた。

一体何を作っているのだろうか...。


しばらくして...。


「できた。」

...なにこれ。眼鏡みたいな物体だ。

「目元につけてみて。」

そう言われ、目元につけてみた。

すると、頭痛が一瞬で引いた。まるで薬みたいだ。

「これは『小型未来体験機構』。称してコミライだね。これさえあれば、頭痛を感じずに、いつでも未来を見れる。君の能力がわかったから、これを完成させることにしたんだ。見た目は眼鏡に似てるけど、未来を見ようとするだけで、未来観察ができる。その間はこっちの世界では時が止まるようになっている。」

時が止まるって...どういう原理だよ。

そもそも地球上でそんなことできるのか...?

「試してみなよ。」

試してみた。現在の時刻は...8:30。

そして、頭をフルで回転し、未来を見ようとした。

すると、さっき見えた焼け死にの景色が今度ははっきりと見えた。

そして瞬きをすると、戻ってきた。

大体5分くらい、見ていた気がするが。

そして時計を見てみると、変わらず8:30。

本当に時は止まっていた。

「ほんとだ、ちゃんと未来が見えたし、ちゃんと時も止まっている。」

「でしょ。これからこまめに未来を見てきて、その後の行動は君に任せるよ。」

「お、おう...。」

私達の詩の旅は、未来予知能力と水瀬姉妹とともに、歩み始めたのだった...。

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