第9話 紅葉の中の依頼者
ここゼネストポリスにも秋がやってきました。紅葉の絨毯が広場を覆い、周囲の秋色が心を休めてくれます。
心地よい気候でもあり、事務所も過ごしやすい日々を送っておりました。
カインの暮らしはというと、ここ最近は警備のお仕事をさぼり気味で、もふもふキューブシャーベットをソファに寝っ転がりがら食べる日々——————
「カインさん!いい加減ダラダラするのはやめて下さい!シャーベットももう無いですよ!」
「ピッピ君…僕の今の気持ちがわかるかい」
「なっなんですかそれは」
「僕はねぇ…こうしてソファに座って…もふもふシャーベットを食べていたい気分なんですよ」
「何なんですかそれは!」
そうしていると、電信が入った。ピッピが受け取る。
「カインさん!良かったですね依頼ですよ!」
「もう…仕方がありませんね」
カインは支度をして、出かけようとするカインをピッピが呼び止めた。
「カインさん、このかぼちゃのランタン使って下さい」
そう言えばもう夜だった。こんな夜更けにやってくるのだろうか?疑問に思いながらも事務所の外に出た。外は真っ暗だ。ランタンの優しい光を頼りに街の入り口へ進んでいく。
街の入り口に到着したカインはしばらく棒立ちで依頼人を待った。が、なかなか来ず帰ろうかと考えていた頃、オルゴールの音が遠くから聞こえてきて驚く。
姿を現した依頼者は大きなオルゴールを引きづりながら現れた。頭がパンプキンだ。
「やぁやぁ、これはどうも。わたくしランプツェルと申します。お見知りおきを」
「それはいいのですが、こんな夜遅くにどうされました?」
「実は大道芸をして回っておりまして、もうしわけありませんが、子供をなるだけ集めていただけると助かるのですが」
「こんな時間にですか?」
カインはきな臭さを感じていたが、子供を喜ばせてくれるのだろうと思い、家を一軒一軒まわり子供を街の中央広場まで集めた。
ランプッツエルはオルゴールを鳴らしながら夜だと観にくいがシャボン玉を出していた。
「わーなんだなんだ?」
「面白そう行ってみようぜ!」
子供たちははしゃいでパンプキンの元へ走り寄る。
ある程度の子供が集まった時、オルゴールの音が止まった。
「おやおや皆さん来てくれてありがとう、今日はとっておきのショーを皆さんにおみせするつもりです」
子供たちは何が起こるのかはしゃいでいる。
「君らのようなバカを捕食するショーをな!」
横で見ていたカインはしまった!と思った。ランプツェルはコウモリを出しながら大きなマントを子供たちに投げかけた。
「わー」
カインは魔法の準備をしていた。枝を取り出し、詠唱をしている。魔法を照射するがジャンプ力でかわされてしまう。
「そんな魔法でやられると思ったかぁ」
カインは持参のワイヤーを投げつけ巻き付けた。
「なっ!」
パンプキンはそのまま引きづりられた。
「魔法が効かないって?レベル50の魔法をお見舞いしようか」
カインの杖から巨大な光の球を出し、パンプキンにぶつける。
「うわぁ~!!焼ける!!」
パンプキンはチリと化した。子供もマントから出て来た。
「なんだったんだ?」
「わかんねー」
秋にやってきた奇妙な依頼者は、殺人大道芸人だった。これからは気を引きしねば、と思いながら事務所に帰ってゆくカインなのでした。
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