第8話 ぱいなぽー!を探せ

残暑がまだ残る中、カインはいつもの観光案内や魚釣り、海水浴に付き合って忙しい日々を送っておりました。

そんな中、とても不思議な依頼が来たのです。

「ぱいなぽー?」

「はいなぽー!!!」

事務所の椅子に座った少女が叫びました。

「砂浜にきっといるぱいなぽーを捕まえて欲しいの」

「そんな話、聞いた事がないなぁ…」

カインも事務所の椅子に座りながら唸った。

「ぱいなぽーはぱいなぽーに手足が付いたすごく速い生物で、夕方の砂浜でぱいなぽーと叫ぶ…」

「待ってくれ、ちょっと待ってくれないか」

頭がフラフラしてきたカインは少女に一時停止を求めた。

「うそだろ?君の中での空想の生物だろ?」

「ちがうもん、ほんとにいるもん」

「捕まえたらどうする?」

「飼う」

心底参った感じのカインだったが、そこへピッピが現れて、

「もふもふキューブシャーベットですよ~。その伝説聞いたことがあります」

「何だって!?」

とにもかくにも依頼である。丁度時刻も夕刻にさしかかっていた。

「いいかい、1度だけ砂浜に行って探してみよう。いなかったら終わりだ。いいね?」

「うん!!」

「じゃあピッピ君、そう言う事だから」

「はい~」

そんな訳で、2人は海岸線までやって来た。海の水はキラキラ光っている。もう辺りは暗くなっていた。

辺りを探したが、ぱいなぽーは見つからなかった。少女もシュンとなっていたその時。

「ぱいなぽー!!」

遠くで確かに音が聞こえて来た。

「ほら、やっぱいるんだよ!聞こえたでしょ」

「聞こえたが…」

どちらの方向からやってきたかはわからない。カインは少女の肩にポンと手を当て言った。

「ぱいなぽーは飼うんじゃなく、野生のままにしておいてあげたほうが、ぱいなぽーの為じゃないかな」

「…うん!!」

やけに素直に少女はうなづいた。生存しているだけでも満足だったらしかった。

海岸から去った砂浜から、残響音のようにきこえてくるぱいなぽーの音。

それはさざ波に打ち消されていなくなってしまった。

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