第4話 春の珍事

ゼネストポリスにも春が訪れた————————

つくしが顔を出し、さくらが舞い、雪解け水がながれていき、ぽつぽつと外に人が現れる。

そんな春の訪れを喜ぶかのように、カインは朝食を採っていた。

もさもさしたキューブ状のもの、『もさもさキューブ』は僕の種族しか食べない御馳走だ。木の実になるのだが、食べてみると触感は土に近く、『ジュ―ジ―な土』といった感じだ。それとピッピが汲んできた雪解け水。これだけで充分至福の食事だった。

満腹になったカインは、早速制服に着替えて外に出る事にした。

仕事が舞い込まない日は、街の警備の仕事もしているのだ。なので城からは給付金をもらっていたので生活には困らなかった。

事務所の入り口のドアを開けるのも楽になった。勢いよく開けて外の空気を堪能する。

街はそこそこの人で賑わっていた。露店を開く者、はしゃぐ子供たち————

カインはうんうんとうなずきながら街を周回していく。と、どこからか悲鳴が聞こえて来た。

「泥棒~~~~~!!!」

悲鳴のする方を見渡すと、建物からズダ袋を持った男が必死に出て来た。多分あれが泥棒なのだろう。

カインは右のポシェットから小さな枝ほどの杖を取り出した。それを揺らしながら詠唱する。泥棒はカインの事が何者か分からず近づいて来る。カインは枝を泥棒の足に突きつけた!

すると泥棒の足元が凍り付き、動けなくなってしまった。

冒険案内者はレベル50以上の魔法を持っており、当然カインも魔法使いなのだ。

「くそっ」

泥棒は悔しがっている。銀行員が駆けつけ、

「ありがとうございますカインさん、お金を盗んだんですよ」

とペコペコ頭を下げた。ひとつ事件を解決したカインは満足げに、

「お金を取ってはだめですよ」

と、泥棒を諭した。

まだまだ春は始まったばかりだ。過去色んな案件があった。

そしてこれからはどんな出来事がカインを待っているだろう。それはぽかぽかと咲く桜にも分からない事だった。

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