宝箱の正体

1-6 変わった子だったよ

「あ、芳川よしかわさん、おかえりなさい」


「やあ、荒城あらきくん。遅くまで頑張ってるね、もうすぐ9時だよ」


「そうなんすよー! 聞いてくださいよー、今日、本当は今度の引越の見積と計画表作るぐらいだったのに、急に修理の依頼が2件入って、忙しくってぇ、もう全然動けなくってぇ!」


「注文が入ったんだ、良かったね」


「それは良いんですけど、このザマですよ! 今日に限って山口やまぐちさん休みだし」


「負荷が軽いはずだったもんね。まだ終わりそうにないの?」


「いえ、9時には終わりそうです。芳川よしかわさんは、こんな時間までどうしたんですか?」


「ちょっと調査に進展があって、これから霊視と、いくつかの確認をしようと思って」


「あぁ、あの件。進展って、『リュックサックがない』ってやつですか? 見つかったんですか?」


「うん。しかも、その中にダイアルを合わせないと開けられない箱があって、それも開いた」


「え、すごいですね」


「公園で悩んでたら、天才少女が助けてくれたんだよ。びっくりしちゃった」


「え、俺が苦しんでる間に何をイチャついてるんすか」


「相手は中学生だよ。それにしても、変わった子だったよ」


芳川よしかわさんがそれ言います?」


「猫の霊がいてたんだ。しかも、3匹も」


「へぇ、猫が3匹。それって、和むべきですか、怖がるべきですか」


「わかんない。その子には僕から声を掛けたんだけど、それも霊の気配があったからで。それとなく話を聞いてみようと思ったら、猫を探してるって言ってさ」


「ん~、逃げちゃったペットが、霊になって戻ってきたとか?」


「どうかな。その時、探してたのは野良猫だったんだけど、とにかく、彼女は猫と因縁がありそうなんだ」


「猫との因縁って、それ――」


「調べるのはこれから。名刺を渡したから、何か悩みとかがあるなら、向こうから連絡もらえるかも。

 それはそれとして、まずは、こっちの件を解決しなきゃ。えっと、依頼人の連絡先は……」

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