1-3 10000通りですよ10000通り
蓋のダイアルは4桁。左端の1桁を回してみると0~9の10種類であることがわかった。「場合の数」で考えれば取り得る数列の数は10000通り。総当たりでは絶対にやりたくないレベルだ。
正解を突き止めるには、与えられた情報から類推しなければならない。
4桁で連想するものと言えば――
「イタズラ坊やの誕生日はわかりますか?」
と、
「そうですか。……じゃあ、その子の好きな子の誕生日とか?」
「あ~、いたのかな? そこまでは聞いてないな」
「ううん……1年生の男の子が好きな番号か」
男子は1番になりたがるから、1111。違った。
「初期設定のままとかあるかな」
「初期設定って?」
「0000とか」
「ふむふむ」
試しに0000、それから1111を飛ばして2222、3333と順番に9999まで入れて、1234もやってみたが不正解に終わる。
やはり、何か意図を持って数字を設定したはずだ。
そこで、
「あ、もしかして」探偵がひらめいた素振りをする。
「わかったんですか?」
名答が出るのか? こんなに早く?
胸が高鳴るのを自覚した頃、薄い唇が言葉を紡いだ。
「適当にダイアルを回して設定したとか」
「……そういうの、やめてください」
中学生は糾弾も兼ねて否定する。期待して損した。
確かにデタラメに決めた可能性もゼロではない――と言うより、小学1年生のイタズラっ子の仕業とあればじゅうぶんにあり得る。
だがそれは
「総当たりするしかないんじゃない?」
「嫌ですよ! 10000通りですよ10000通り! 探偵なら考えて突き止めましょうよ」
「なんか、ムキになってない?」
「なってませんよ。何も考えずに総当たりっていうの、負けた気がするだけです」
「それ、ムキに――」
「その子の名前、聞いてもいいですか? 名前からの語呂合わせとか」
児童の名字か名前、家族の名かも知れない。あと、好きな子とかキャラクター。候補が次々に出てきた。
ところが
「ごめんね、依頼人の家族の名前は教えられない。守秘義務ってやつ」
折角、正解が見つかるかも知れないのに。水を差された
意地悪探偵は苦笑まじりに「ごめんごめん」と言うだけで、本当に教えてくれなかった。
「えっとね、その子のおばあちゃんの家で飼ってる猫は、ヌクっていう名前だよ」
「ヌク、ですか」
欲しかったものではないが、新情報である。
ヌクか……素直に数字に置き換えようとすると、クは9だがヌは難しい。ひらがなも無理そう。ローマ字はどうだろう。
試してみたが残念、不正解。
ため息が出てしまった。
「なんて入れたの?」
「3131。ローマ字に変換するとNUKUの4文字なので、その画数です」
「よく思いつくね」
「でも、駄目でした」
そもそもローマ字の画数とは小学1年生に似つかわしくない発想だ。切り口を変える必要があるかも知れない。
何か、小学1年生が好きそうな語呂合わせはあるだろうか?
2人で思案したが、やる気とは裏腹に正解には一向にたどり着けなかった。
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