Episode7
翌朝、2人はベッドの上にいた。
お互いに力尽き、眠りに落ちている。
そんな時だった、
軽快なミュージックが鳴る。
「ふぁ?あ、私のスマホ」
一糸纏わぬ姿の愛華が、枕元に置いてあるであろうスマホを手探りで探す。
その間も、スマホは鳴動している。
「あー、コンタクトないから見えないよぉ」
「愛華、眼鏡は?」
「あ、それです・・・でも、先にスマホ」
やがて、彼女は鳴動するスマホに出る。
「はーい、愛華です・・・って、晴夏先輩?」
彼女は、電話対応をし始めた。
宗吾は、邪魔をしないように着替えを済ませキッチンへと向かった。
キッチンにある冷蔵庫の中には何もなかった。
離婚届を叩き付けられ1週間。
そして、入院しておおよそ1週間。
2週間も経てば食べれるものなど残っていない。
宗吾は、腕を組んで悩み出す。
うーんと唸っているとそこへ愛華がやって来る。
「宗吾!いまから出かける準備して」
「え?いいけど・・・」
「あ、スーツでね」
そう言う、彼女はすでにスーツを着ていた。
宗吾は、首を傾げながら再度着替えに向かった。
「まさか、晴夏先輩から電話が来るとは思わなかった」
そうポツリと漏らす。
彼の家には、すっかり愛華の私物が増えていた。
数日後には、本格的にここに越してくることになっている。
彼女自体、アパートの維持が困難になるからと言うことでだ。
しばらくするとスーツに着替えて、宗吾が戻ってきた。
「お待たせ、それでどこにいくんだ?」
「大学時代の先輩から連絡が来て、人手が足りないらしくて」
「ん?よくわからないけど。まあ、いいか。車出すわ」
2人は、車庫へと向かう。
そして、宗吾の乗用車へと乗り込む。
もちろん、運転は彼がする。
「愛華、行先は?」
「えっと、駅前の喫茶店です」
「分かった」
彼は、運転をする。
宗吾の運転は、危なげもなくとても安全運転で余裕がある。
愛華とは、大違いだ。
「宗吾の運転は安心できて眠くなる・・・」
そう言うと彼女の頭がカクンと落ちた。
どうやら、寝てしまったようだ。
「昨日も遅くまでしてたからな、まあ到着するまで寝かせておくか」
宗吾は、独り言をつぶやくと運転に集中する。
それから、30分ほどが経ち彼は街中の立体駐車場に車を停めた。
「愛華、着いたぞ。起きろ」
宗吾は、彼女を肩に手を置き揺り起こす。
愛華は、眠り眼を擦り「ふぁあ」と言いながら起きる。
「あ、せんぱ・・・宗吾、ありがとう」
無意識だとまだ「先輩」と言ってしまうようだ。
「じゃあ、行きましょう」
ドアを開け、愛華が出て行く。
それを、追いかけるようにドアを開け宗吾も出ると施錠をする。
やがて、彼女はクルリとその場で回る。
愛華は追い付いた彼の腕を取り、「えへへ」と笑みを浮かべる。
宗吾は、彼女を振り払うこともなくそのまま歩き始めた。
「デートみたい」
「ああ、そうだな」
そう言いながら2人は歩いていく。
立体駐車場を出て、待ち合わせの喫茶店へと向かう。
距離はそこまで離れてはいない。
やがて、喫茶店に着くと奥の席にいる女性が立ちあがり、手を挙げた。
「おーい、愛華!」
「あ、晴夏先輩」
彼女は、宗吾の腕を引っ張って奥の席に向かう。
席には、もう一人男性が座っていた。
「あれ?間宮先輩?」
「おまえ、早間か」
2人は、席に着きコーヒーを頼んだ。
しばらくすると、コーヒーが届くと口を付けるのだった。
さて、ここで説明をしておこう。
宗吾と愛華が務めていたのは、例の「トウドウカンパニー」(*第1話Episode1~Episode4)だった。
弓弦が、辞めたのが3月末。
愛華が、入社したのが4月だった。
この2人は、ちょうど会っていなかっただけで宗吾は2人の共通だったと言うことだ。
「それと、藤麻も久し振り」
「はい、早間先輩もお久し振りです」
ここで、会ったことがないのは宗吾と晴夏の2人だけである。
「じゃあ、顔見知りの2人は放っておいて。
えっと、間宮さん?私は、秋山 晴夏。
愛華の大学の先輩で、弓弦さんとは高校からの付き合いです」
「これは丁寧に、俺は間宮 宗吾。
3月まで弓弦とは同僚で、4月から愛華とは同僚だった」
お互いに、彼らは挨拶をした。
不思議な縁である。
「ということは、間宮先輩。
あの会社辞めたんすか?」
「おう、ちょっといろいろあってな」
「なら、僕たちと一緒に働きませんか?
先輩の実力は僕が知ってますし、いまデザイナーがほしかったんです」
弓弦は、真っ直ぐな眼差しで宗吾に言う。
「愛華もお願い。私達と一緒にやりましょ。
貴女が、デザイナーになりたかったんでしょ」
その言葉を聞き、宗吾と愛華は顔を見合わせる。
そして、お互いに頷く。
「ああ、よろしく頼むよ。早間、秋山さん」
「よろしくお願いします。早間先輩、晴夏先輩」
2人は、頭を下げてそう返事をした。
こうして、弓弦と晴夏の2人だけだった「シリオン企画」に宗吾と愛華と言うデザイナーが加わることになった。
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これは、Episode2とEpisode3の間のお話になります。
Episode3の冒頭に出てきた追加されたデザイナーが宗吾と愛華だった。
宗吾は、営業もするデザイナーをトウドウカンパニーでしていた。
愛華もまた、同じように営業とデザイナーをしていた。
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