Episode4

そして、4月1日。

今日は、入社式である。

といっても、大きな会場ではない。

全員でも10人ほどなので小さな会議室である。

会議室は、街中にあるランドマークであるタワーに時間制の物があるのでそこを借りた。

現在は、マンションの一室をオフィスにしている。

その為、会議室はオフィスには存在していない。

のだが、そのマンションからもまもなく引っ越すことになる。

増員と共に、新たな場所にオフィスを構える。

現在は、内装工事中で来週7日から引っ越しが完了する見込みである。

実は、その場所は弓弦が以前勤めていた会社があった場所だ。

昨年年末閉業を余儀なくされた。

弓弦が、退社することになった3月。

この時期は、まだ彼がマネジメントをしていた時期だったため瀬戸際運営をしていた。

「トウドウカンパニー」は、あまり業績が良くなかった。

だが、弓弦を失うことで転落していく。

「トウドウカンパニー」は、9月末の株式総会で広告代理店業を廃止にすると宣言した。

弓弦達が、フランスレストランでハルミ達と出会ったあの日の出来事である。

ハルミ自体は、会社経営には関わっておらずそのことを知らず、国広は株式総会の出席はせず、休暇を取っていた。

だから、自分の勤める会社が閉業すると知らなかった。

そして、12月末に閉業をした。

国広は、10月に入って失踪。

ハルミは、親会社へ出向。

ただし、素行の悪さが露見することとなる。

彼女は、仕事が出来ない。

そして、家事も碌にできず普段から遊び歩いていた。

金遣いも荒く、高級ブランド品で身を固めている。

元々弓弦と婚約していた期間は、彼の給料の大半を浪費していた。

ただ、追い出された後に弓弦は全てのクレジットカードを停止、解約した。

また、使われないように口座も解約をした。

彼の私物は、マンションに残ったままだったためそこには通帳もあったのだ。

国広とハルミは、大学時代から裏で付き合っていた。

彼が、8股しているという噂を知っていたが自分が本命だと思い込んでいた。

婚約したのも財産目当てだったが、業績が悪くなる一方でさらに閉業と重なったために逃げたのだった。

ハルミは、仕事が出来ない・家事能力もない・素行が悪いと言うことで政略結婚をさせることもできず、一族の穀潰しとされ屋敷から外出することすらも許されていない。

その禁を破れば、今までに重ねた負債の山を押し付けられ勘当されることだろう。

不良物件・不良債権へと成り下がったのだった。

これが、ハルミに降りかかったことの顛末だった。


さて、所変わって会議室。

会議室には、弓弦と晴夏がスタッフと会話をしながら準備をしている。

ケータリングを頼み、テーブルには料理が並べられていた。

入社式と言っても半分は親睦会の意味合いも込められている。


「冬華さん、今日はありがとうございます」


晴夏は、艶のある黒髪をルーズサイドテール・・・後ろ髪を束ねて結び、肩の前に垂らす髪型をしている女性と話をしている。

彼女は、木倉 冬華。

晴夏の大学時代の先輩で、弓弦とは同級生である。

冬華は、大学を卒業後ケータリング専門の飲食サービス業の会社を大学時代の友人と立ち上げた。


「晴夏ちゃんこそご利用ありがとうね」

「ちょうど、会社が改装中で出来なかったから会議室付きで助かりました」

秋桜あおは、晴夏ちゃんに会いたがってたよ、また遊びに来てね」

「はい、また今度遊びに伺いますね」


秋桜あおは、冬華の娘で現在4歳である。


「今日は、秋桜ちゃんは?」

「お母さんたちに預けてきちゃった」

「春さんもお変わりなく?」

「とっても元気。今日は、優子さんも一緒だから退屈はしてないと思うけど」


冬華の母、藤ヶ崎 春と義母である木倉 優子は隣家に住む幼馴染みである。

晴夏と冬華は、秋桜の話題をその後もしていく。

弓弦はと言うと、彼は長身でガタイの良い男性と話をしていた。


「優一、すげぇ久し振りな気がするんだけど」

「ああ、確かに・・・お互い社畜だからだろうな」

「あー、否定できない」


男性は、木倉 優一。

冬華の旦那で、普段は介護士施設で介護職員をしている。

弓弦とは、大学時代の同級生である。

優一は、冬華と彼女の会社の上司に頼まれ手伝いに来ていた。


「そういえば、弓弦おめでとう」

「ん?ありがとう・・・いや、どれ?」

「晴夏さんと結婚するんだろ」

「ああ、それか。ありがとう。

まあ、式は再来月なんだけどな」

「知ってる。俺も、呼ばれてるし」

「確かに」


弓弦と晴夏は、6月半ばに結婚式を挙げる。

彼らも招待している。


「お、そろそろ時間か?」


優一は、時計を見ていた。

時刻は、まもなく12時を回る。


「そうだな。じゃあ優一、今日はよろしく」

「おう、じゃあまたあとでな」


優一は、冬華の元へと向かった。

弓弦は、出入り口へと向かう。

彼の後を追う様に、晴夏がやってくる。


「弓弦さん、出迎えに行きましょう」

「ああ、いこう」


2人は、会議室を出て集合場所としている場所へと向かった。

こうして、彼らの会社『株式会社 シリオン企画』が始まった。


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『幼馴染み』の主人公 木倉 優一と藤ヶ崎 冬華のその後です。

最終話のその後の話になります。

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