第2話 母は強し、老婆はもっと強し

ピチピチの女子高生が拾いかけたら、それをホームレスのおっさんが奪い去っていった。


金には魂が宿ると言うが、隆の魂はワンカップ大関に変わった。



再び母の枕元に立つ。

「あー今寝ようかと思ってたのに…何よ隆」枕元にはキンチョーのコックローチ退治スプレーが置いてある。

それをまさか隆に使う気なのだろうか。


「何よじゃないよ!なんで駅の改札側じゃなくてホームレス寄りの所に置いたの、ってか見てたけど投げ捨ててたよね!?」


「やる事やってるからいいじゃない。明日またどっか置いてくるから」と言うと隆に向かってキンチョーのスプレーを振りまいた。


鬼の所業だ。怖がれとまでは言わない。せめて邪険にしないで。

コックローチでは無いのだが、隆は家から追い出された。


キンチョーすげぇ。



翌日昼過ぎに寝ぐせをつけ、パジャマ姿の母が歩いていく。


だるそうにテトラポッドの手前に封筒を投げ捨てた。


案の定拾ったのは筋肉質で日焼けした漁師だった。

漁師は中身を確認すると翌日家から線香を持ってきて両手を合わせる。


一瞬キュンとして、もうこの人でいいかしらと思ったが、やっぱり女の子がいい。

だって男の子なんだもの。


次に拾ったのは八十歳程の熟し終わった老婆で、中身を見るとお経を唱え始めた。

やめて、成仏しちゃうから。

まだ早いから。


危うく天に上りかけたが必死でこらえて我慢した。

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