「迷婚」心温まるほっこりホラー。

村崎愁

第1話 嫁探し


隆は十八歳の若さで亡くなった。

台湾人の母は古くからの台湾の風習、”冥婚”のために髪の毛と血糊、お金を用意していた。


「ちょっと取りすぎじゃないか?ほら隆ハゲてるぞ?指だってあぁもう酷い事に…」母は父の言う事に耳を向けず一心不乱に搾取する。

余った髪や血糊は丁寧に箱に閉まった。


封筒に少量の髪の毛、血糊のついた金を封筒に仕舞い公園に投げる。

それを拾った人間と婚姻成立してしまうという恐ろしい風習であった。


そのまま相手を冥土に連れ去るなど言い伝えもある。


隆はドキドキと動かない心臓を高鳴らせ、その様子を上から見ていた。


「女子高生がいいな~教師とかもスリルあっていいかも」



二日ほど放置され、早朝に男の幼稚園児が封筒を拾った。中を見て小銭だけを取り出し、髪の毛はポイと捨てられた。


「え、ちょっと待って。俺ショタとかじゃないしこれは違うよね?」


焦る隆は母の枕元に立った。


「あら隆。どう?いいお嫁さんいた?」母は何とも思っていないようだ。


「いやいやいや、拾って行ったのって男の幼稚園児だよ?しかも金、五円チョコ四枚に消えたんだよ?」


「あらそ。そう思って母さん髪の毛と血糊用意してました。明日の午前の便で出すわね」淡々と郵便物を扱っているようだ。


「公園はもうやめてよ。駅とか女子が通るところがいい」


「はいはい」と言うと母は背を向けて寝てしまった。

一体母の血は何色なのだろうか。


次こそはと信じていると昼過ぎに母が駅に封筒を置きにきた。

置くというよりも明らかに投げ捨ている。


遅刻した上に投げ捨てるとは。本当にこれが母親なのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る