第3話



 ーー ーー



 つかの間の贅沢を受け入れていた私の元に、ある青年がやってきた。

 よく知っている青年だ。


 同じ村に住む者どうしだから、彼とは何度も話したし、触れ合っている。


 だから、同じ時間を共にするうちに、二人が特別な関係になるのは自然な事だった。


 私は彼の事を好いていたし、彼も私の事を好いていた。


 そのうち、彼がそう言いだすのはおかしな事ではなかったはずだ。


「一緒に逃げよう」


 そう言われた時、私はどんな顔をしていただろう。


 平静な顔で、首を振った自信が無い。


 私一人の幸せと引き換えに、多くの人を不幸にする事なんてできない。


 彼は何度も同じ事を繰り返したが、私は一度も首を縦には降らなかった。


 そしてとうとう、その時がやってきた。



 ーー ーー


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