第157話 王都軍兵卒アボット05

 ハンマーがぶつかる瞬間、ぼくは目を閉じて身体に力を込める。

 そんなことをしても無駄。

 わかってる。

 盾を持つ手に衝撃を感じる。

 おわた。たぶんこれでおわった。

 たぶん、ぼくは潰されて死んでいるんだろう。

 まあ、あんまり苦しくないし、いいとしよう。

 一夏たんは守れなかったけど、ぼくにしたらよくやったほうだよね。

 ぼくは恐る恐る目を開ける。

 目の前にはお花畑か三途の川か。

 それとも地獄かな。

 でも、ぼくが地獄なら、ほとんどの人は地獄だと思うよ。

 たぶん、ぼくは人間として平均点なやつだから。


 開けたぼくの目に映るのは、まだ元の世界だった。

 ぼくの盾がゴードンのハンマーを受け止めている。

 えっ、これって夢なんだよね。

 ぼくがあの大槌を受け止められるわけないからね。

 ゴードンの目は驚きに見開いたまま。


「嘘だろ。

 こんな小さなやつが」

 ゴードンはそう言ってハンマーに力を込める。

 でも、盾にはそんな力を感じない。

 

「これでどうだ!」

 ゴードンは一度大槌をひいて、再度振りかぶる。

 そのまま、渾身の力を振り下ろす。

 また盾と大槌がぶつかる。

 でも、あんまり衝撃は感じない。

 どういうこと?

 

「まさか、ありえない、ありえない」

 ゴードンは何度も何度も大槌を振り下ろす。

 でも初撃ほどの衝撃はない。

 助走していないし、体重も乗っていない。

 それと、ゴードンの攻撃は遅い。

 大槌の軌道が丸見えだ。

 ぼくは、大槌に自分から盾をぶつけてみる。

 そのとたん、ゴードンは大槌を弾かれる。

 大槌はくるくると回りながら、上に上がる。

 なに?これ。

 ゴードンって見掛け倒しだったの? 

 それともあの大槌ってあんまり重くないとか。

 ぼくは、隙を逃さず盾で殴りつける。

 そういえば、この盾ってこんなに軽かったっけ?

 ジュエルボックスのライブでのあの光を浴びてからなんか軽く感じる。

 ゴードンはその場に尻もちをつく。

 やっぱ最初に出てくる敵ってよわいんだ。

 そのゴードンの上に空高くあがった大槌が落ちてくる。

 ゴードンはそれを受けそこなう。 

 グシャ、なんか嫌な音がして、ゴードンは大槌に潰されるのだった。

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