第158話 第六師団中隊長ゴーディ03

 ゴードンが一番に飛び出す。

 こいつは俺にまかされたもう一つの隊の中隊長だ。

 粉砕屋という二つ名をもつやばいやつ。

 だが、王国でいう八本剣に相当する強者でもある。

 隊長自ら先陣を切るというバトルジャンキーであることも好ましい。

 俺の隊には必要な人材だ。

 まずはお手並み拝見といこうか。


 ゴードンはゆっくりと門の正面に向かっていく。

 そこには盾の壁。

 ただ、そんなに統制はとれていない。

 盾の間隔がバラバラだし、前後もそろっていない。

 見ただけで寄せ集めの軍隊であることがわかる。

 アズローの見立ては正しいのだろう。

 その中でもいちばん小さいやつの前に進んでいく。

 こういうのはいちばん弱いところから崩すのがセオリー。


 近くに到達するとゴードンは大槌を振りかぶる。

 そのまま、助走をして盾の壁に飛び込む。

 そして、大槌を振り下ろす。

 槌の頭が盾とぶつかる。

 これで終わりだな。

 俺は全軍突撃の合図を出そうとする。


 まて。おかしい。

 おれはゴードンを直視する。

 盾の兵士を潰しているはずの大槌は盾に食い止められて静止している。

 ゴードンはそのまま力で押しつぶそうと力をこめる。

 しかし、盾の兵士はびくともしない。

 それに比べゴードンは歯を食いしばり渾身の力を込める。

 どういうことだ。

 明らかに盾の兵士は腰が入っていないはずなのに。

 

 ゴードンはそのまま一度槌をひいて再度振りかぶる。

 そのまま振り下ろすがやっぱりびくとも動かない。

 助走をつけた初撃が通じないのだから、あたりまえだ。

 まさかあの兵士は八本剣とかいうやつじゃないのか。

 そういえば、防御に特化したやつがいると聞いたことがある。

 

「ひけ!ゴードン!」

 俺は叫ぶ。

 だが、ゴードンには届かない。

 ゴードンは無茶苦茶に大槌を振り回す。

 そんな攻撃は効かない。

 仕切りなおして他のところから攻めるべきだ。

 やはり、門の中央にはそれなりの兵が配置されていたのだ。

 あのそろってない盾の壁も作戦だったんだ。

 さすが軍師コウメイの国。一枚上だった。


 俺がそう思っている間にゴードンは大槌を跳ね上げられ倒される。

 そのゴードンの上に大槌が落ちて、ゴードンは押しつぶされるのだった。

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