第156話 王都軍兵卒アボット04

 なんか、敵がこっちに近づいてくるよ。

 これってやばいんじゃない。

 それも、ぼくはなんかちょうど門の前に立っている。

 ここって真っ先にやつらが襲ってくるとこじゃない?

 やばいよ、やばいよ。

 確かにこっちは2000人位いるから、数では優っている。

 ただ、まわりを見る限り従軍経験のありそうなやつはいない。

 ぼくと同じで全員が素人だ。

 みんな顔が青ざめている。


 敵軍はぼくたちの近くで一度足を止める。

 彼らの前にひとりの鎧の男が進み出る。

 なんかぼくたちを倒せとか言ってるよ。

 その男が腕を振り上げると、敵軍の兵士たちが雄たけびをあげる。

 なんか気合入りまくってんじゃん。

 

「俺は粉砕屋ゴードンだ。

 俺が一番に行こう。

 あの盾の野郎どもをぶっ潰してやる。

 俺が切り開く。俺に続け」

 なんかひときわ大きいやつが巨大なハンマーを掲げる。

 あんなので襲われたら…

 たぶん、この盾では防げない。

 ぼくなんて盾ごと潰されてしまうだろう。


 ゴードンはぼくたちに近づいてくる。

 まっすぐに。その方向はぼくの真正面だ。

 こっちくるな。それてくれ。

 ぼくは神に祈る。

 その願いは届かず、まっすぐにぼくのところに向かってくる。

 100m、50m、10m。

 そこで、ゴードンはハンマーを振りかぶる。

 

「よし、ここが門の正面だ。

 ここを潰してやる。

 それを合図にお前ら門を壊せ。

 そうすれば王都に入り込める。

 ここを突破したら王都は我々のものになる」

 ゴードンはそう言って助走をつける。


 まじ、正面。

 ぼくの目の前2mくらいのとこ。

 やべ、無茶苦茶大きいじゃん。

 あの腕のふとさ、ぼくのウエストくらいあるんじゃない。

 その上、顔が傷だらけで無茶苦茶怖い。

 ゴードンは鬼のような表情でぼくをにらみつける。

 やばい、ちびったかも。

 

 ゴードンはンマーを振りかぶる。

 そのまま、ハンマーを振り下ろす。

 そのハンマーの頭はまっすぐにぼくのところに飛んでくる。

 やばい、これで終わりだ。

 一夏たん、ごめんなさい、ぼくは王都を守れなかったよ。

 ぼくは、無駄なのはわかっていながらも、そのハンマーに大盾を合わせるのだった。

 ドーン。

 ハンマーと大盾がぶつかり大きな音が響くのだった。

 

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