第155話 第六師団中隊長ゴーディ02

 さて、そろそろ王都だな。

 これまで、進軍をじゃまされることはなかった。

 相手の中央は張りぼてだというアズローの見立ては正解なのかもな。

 もしかして罠。

 まさかな。

 俺たちをおびき出して倒す。

 そんな力、王国にはないはずだ。

 

「隊長、本当に好きにやっていいんだな」

 俺より頭一つ高い男が俺の横に来る。

 こいつがもう一人の中隊長だった男。

 背中にバトルハンマーを背負っている。

 粉砕屋ゴードンというやつだ。

 バトルジャンキーだが腕はたつ。

 なんでも、捕虜を座らせて片っ端からハンマーで潰していったという話を聞いたことがある。

 まあ、俺も同じようなことをやったことがあるがな。

 見せしめというのは大事なのだ。

 俺たちに逆らう気をなくすくらいに心を折ることだ。

 あとゴードンの横には双子のナイフ使いリンクスとビンクス。

 串刺し公ファーゴ、仮面の怪力無双ジェイソン、はぐれ魔導士バルコム、黒い道化師パピオン。

 俺たちの隊はやばいやつらの寄せ集めだ。

 

 敵の隊が見えてきた。

 盾を並べて門を固めている。

 騎馬隊は見えない。

 ウィラードはここにはいないのか。 

 俺は遠眼鏡を覗く。

 みるからに慣れていないやつらみたいだ。

 盾の並び方をみればわかる。

 やつらは素人だ。

 あんな盾の壁を潰すのは簡単だ。

 俺は躊躇なく進軍を命ずる。

 

 だんだん、王国軍が近づく。

 俺は一度進軍を止める。

 それから、一番前に出る。

 

「みんな、聞いてくれ!

 俺たちは中央を突破する。

 見ろ、あいつらを。

 傷一つない鎧、真新しい槍、剣。

 どうみても、戦ったことがあるとは思えない。

 つまり、あいつらは素人だ」

 俺は自軍の方に向かって語る。


「やつらを蹴散らしたら、王都だ。 

 おまえらの好きなように奪っていい。

 虐殺、略奪、強姦、すべて許す。

 そのためには、目の前のやつらを倒せ。

 方法は問わない。いいな。

 おまえらの好きなようにやつらを倒せ。

 早いもの勝ちだ。ぐずぐずしている時間はないぞ!」

「オーーーーーーー!」

 俺が腕を振り上げると、自軍から大きな雄たけびが上がった。

 

 

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