第154話 王都軍兵卒アボット03

 ライブが終わったら門を出る。

 門のところで、帝国軍を迎え撃つらしい。

 キリシュ隊長は戦いになることはないというんだけど。

 でもキリシュさんってジュエルボックスのマネージャーの人じゃなかったっけ。

 本当に軍を動かしたりできるの?

 それに隊の前ではリヴァイアさんたちが推しの法被で陣取っている。

 そのうえ、タスキを掛けていてそれには『わたしは八本剣』って書いてある。

 もしかしてあの人たち八本剣を装うのか?

 それで、相手をびびらして退けようというのか?

 無理無理無理。

 やっぱ、キリシュさんは素人だよ。

 そんな人に命を預けないとならないの?

 たぶん、死ぬな。


「進軍のセオリーから言って、正面突破はありえない。

 とにかく、相手を牽制しろ。

 にらみ合いにしかならない。

 相手に弱みをみせるな」

 キリシュさんが叫ぶ。


 そんなうまいこと行くのかな。

 でも、隊長はただのマネージャーだし。


 ぼくは持ち場につく。

 大楯を前に立てて槍を立てる。

 なんか手が震えている。

 まわりのみんなも同じ。

 やっぱ戦ったこととかないもんな。

 ジュエルボックスの、一夏ちゃんのためと言ってもやっぱ無理だよな。

 やっぱ、怖いよ。


「帝国軍が来ました!

 こっちに向かっています」

 見張りの人の声がする。

 始まったな。

 ぼくは正面を見る。

 まだ遠いけど、黒いものがこっちに向かってくる。

 最初は点だったけど、だんだん大きくなってくる。

 目視で騎馬だってわかるようになる。

 だいたい100、違う300くらいかな。

 それと歩いている軍もそのあとに続いている。

 1000はいるな。

 あんなのと戦うの? 

 たぶん、こんな盾なんて簡単に潰される。


「こっちに来やがったか。

 それなら、戦うしかないな。

 みんな、盾を構えろ。

 絶対引くなよ。

 相手を押し戻すんだ。

 そうすればなんとかする」

 キリシュ隊長が叫ぶ。

 いや、マネージャーになんとかできる問題じゃないんだ。

 ぼくは、盾を構え、できるだけその中に身を隠そうとする。

 そのぼくたちのところに地響きのようなものが確実に近づいてくるのだった。

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