第152話 王都軍兵卒アボット02

 やっぱ一夏たんは最高だ・

 あの元気のいいダンスを観てるだけで元気が出てくる。

 本当は昨日からすごく怖かったんだ。

 全然眠れないくらいにね。

 それで体調は最悪だったんだ。

 なんか周りのみんなもそうだったらしい。

 だって戦争って殺し合いじゃん。

 たしかにすこし剣の使い方とか戦い方とか教えてもらったけど、すぐに実戦なんてできるわけない。

 ジュエルボックスの一夏たんのためと言っても、人を殺したり殺されたりするのは嫌だ。

 それにどんなに頑張っても殺される方の未来しか予想できない。

 とにかく最後にジュエルボックスのライブが観れてよかった。

 心の中に焼き付けて死んでいこう。

 それだけでいい。

 でも、もっとライブを観たかったな。


 そのライブの間に不思議なことが起きた。

 一曲目のサビの時に赤い光の粒がぼくたちに降り注いだんだ。

 その光の粒はぼくたちの身体に当たったとたん消える。

 最初は舞台演出かなっておもったけど、こんな物質見たこともない。

 もしかして、ジュエルボックスの起こしてくれた奇跡かも。

 その光の粒を受けたとたんなんか勇気が出てきたんだ。

 不安で不安で仕方なかったのに、なぜか心が軽くなった。

 歌のとおりに勇気が湧いてきたんだ。

 

 そして、次の曲で青い光の粒が降り注いだ。

 そのとたん、身体に力がみなぎってきた。

 最後の曲では金色の光の粒。

 それをあびたとたん、何か身体が硬くなったような気がした。

 たぶん、気のせいだけどね。

 ぼくたちは死地に赴くのだから。

 生存確率はほとんどないんだけどね。


 ライブの余韻も冷めないうちに行軍がはじまる。

 あれっ、ぼくの隊って以外と前のほうじゃん。

 っていうか最前列じゃん。

 ライブなら歓迎だけど、戦争じゃあ歓迎できない。

 

「俺たちの持ち場はここだ。

 ここで盾を構えて敵の攻撃を防ぐ壁を作る。

 防いだ敵を弓矢と槍で攻撃する。

 剣の戦いでは負けるかもしれないが、これならなんとかなるかもしれない。

 ここでの戦いは君たちのがんばりにかかっている。

 健闘を祈る」

 中隊長が作戦を述べる。

 って作戦でもなんでもない。

 ここで壁になって防げって、絶対に無理じゃん。

 でも、仕方がない。

 王都を、いやジュエルボックスを守るんだ。

 そう考えると勇気が湧いてきた。

 ぼくはみんなと並んで大楯を地に立てて身構えるのだった。

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