第151話 白銀美桜03

 次はコミカルな踊りと歌。

 恋は戦いみたいな歌詞。

 大事なものは戦って勝ち取るしかないみたいな。

 まあ、すこし明るい気持ちになってもらえたらなって感じ。

 わたしたちも観客席もノリノリになる。

 わたしたちはひとりひとり中央に行ってソロでダンスを披露する。

 メンバーが変わるたびに名前を叫んでくれる。

 一番盛り上がったところで今度は青い光の粒が客席に降り注ぐ。

 この演出なんだろ。

 でも盛り上がっているからいいや。

 次にの曲もおわって会場のボルテージはマックスになる。


「つぎはスローバラードです。

 美桜、こっちに来て」

 美羽がわたしを中央に呼ぶ。

 わたしはゆっくりステージの中央に行く。


「最後の曲です。

 わたしたちが望むのは、この国が守られることではありません。

 わたしたちが望むのはこの王都のみんなの幸せ。

 だから、みなさん、無事に戻ってきてください。

 それではそんな気持ちを込めて歌います」

 イントロが始まる。

 恋人が戦場に行った娘の歌。

 無事に戻ってくることを祈るしかない。

 そして、再会、ハッピーエンドを歌い上げる。


 会場はしんみりとした空気につつまれる。

 中には泣いている人もいる。

 今度は金色の光の粒が降り注ぐ。

 なんなんだろこれ。

 わたしに降り注いだ光は身体に振れると消えてしまう。

 

 本当は元気の出る曲ばっかりをやるつもりだったんだけど、やっぱり戦場に送り出すってそんなことじゃない。

 別に負けてもいいから、みんなが無事に帰ってくるのが一番だ。

 美羽がいいだしたんだけど、メンバーのみんなが賛成した。

 これがジュエルボックスの総意だ。


 曲が終わって会場はもっと大きな拍手でつつまれる。

 

「最高!」

「おれらが王都を守るぜ」

「帝国のやつら、ジュエルボックスに指一本触れさせない!」

 

「みなさん、またライブを観に来てくださいね。

 約束です」

 美羽がそう言ってライブは終わる。

 なんかメンバーを呼ぶ声、拍手が鳴りやまない。

 これで、今日のライブは終わりだ。

 アンコールはなし。

 だって、また祝勝会でみんなと合うつもりだから。

 ものたりないくらいでちょうどいいんだ。

 わたしたちは兵士の人たちに深くおじぎをして、控室に戻るのだった。

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