第150話 白銀美桜02

 今日は出陣式の日だ。

 なんか国を守るために戦争をするって、違うような気がするけど。

 だからと言って攻めてくる国を撃退する力なんてわたしたちにはない。

 できることはみんなを勇気づけること、元気にすること。

 それから無事に帰ってきてって祈ること。

 それくらいだ。

 だから、できることをやる。

 最高のライブで送り出す。

 

「わたしたちの国はわたしたちで守る。

 自分の大事なものを思い浮かべてください。

 それを守れるのは他でもないあなた自身なんです。

 今、この国は危機に瀕しています。

 帝国の侵攻を受けると、ライブどころではなくなります。

 わたしたちの文化を、ダンスを歌を演劇を、推しを守るのはわたしたちなんです」

 大統領の演説に熱が入る。


「それではわたしたちを応援するためにジュエルボックスのみなさんが来てくれています。

 元気の出るライブをご覧ください」

 そう言ってマルクスさんが舞台袖にひく。

 それと入れ替わりにわたしたちが出ていく。


「ジュエルボックスです。

 今日はマルクス大統領の依頼で出陣式でライブをさせていただきます。

 メンバー全員、みなさんが無事に帰ってくることを心から祈っています。

 その気持ちをダンスと歌に込めます。

 みなさんに元気になってもらえたらうれしいです」

 美羽がそう言って振り返りわたしたちの目を見る。

 それを合図に楽団が演奏を始める。


 最初はアップテンポな曲。

 激しいダンスを中心にした勇気を歌った歌だ。

 勇気さえあればなんでもできるって歌詞。

 一夏と佐那の激しいダンスが売りだ。

 ステップを合わすのに凄く苦労した。

 わたしも佐那にすごい怒られたし、それでもなんとかマスターできた。

 サビの部分でなんか赤い光の粒みたいなのが客席に降り注ぐ。

 こんな演出ってあったっけ? 

 まあ、マルクスさんがみんなを喜ばそうとやってくれたのかもしれないな。

 マルクスさんは舞台袖でペンライトを振ってくれている。

 客席も武器を掲げて喜んでくれているみたい。

 まず一曲が終わる。

 すごい拍手が起こる。

 

「ありがとうございます」


「美羽たーん!」

「もう死んでもいい!」

「ライブありがとー」

 観客席から叫ぶ声。

 わたしたちは手を振って声援に答える。


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