第148話 マネージャーキリシュ08

「それで、あなたたちには八本剣と宮廷侍従長になってほしいのです」

 俺はおっさんたちを集めて言う。


「そんなこと言っても、我らは4人しかいないぞ」

 リヴァイアのおっさんが困った顔でいう。


「いいんです。残りは適当にでっちあげますから」


「八本剣って、この前の弱いやつらじゃない。

 あんなに弱くはなれないわ」

 姉さんが不満そうな顔をする。


「いえ、ふりをするだけでいいんです」


「それより、帝国が攻めてくるんでしょ。

 ぼくたちで滅ぼしてこようか?

 ぼくらは早くライブをやってほしいんだよ」


 スラリムはいちばん常識がわかると思っているが、やっぱりおっさんたちの仲間だ。

 世間を知らない。

 

「いえ、スラリムさんは宮廷魔導士のふりをしてくれればいいです。

 それだけで、帝国の動きが止まります。

 その間にウィラードさんが帝国を叩いてくれます」


「我らが叩くのが手っ取り早いんだが」

 リヴァイアのおっさんが言う。

 たしかにおっさんが強いのは認める。

 ただ、個人の強さでは軍隊と戦うことはできない。

 せいぜい戦えても100人くらいだろう。

 軍と戦えるのは本物の八本剣くらいだろう。

 しかし、ふりくらいならできるだろう。

 

 わたしと彼らを遊軍として一番弱い中央に位置する。

 中央軍は基本しろうとの集まり。

 ここを突破されるのが一番まずい。

 しかし八本剣を名乗れば、やつらは動けなくなるだろう。


「わかった。

 マネージャーの言う通りにしよう」

 リヴァイアのおっさんが同意してくれる。

 これでなんとかなるだろう。

 それでは命がけの茶番劇を始めようか。


「それではこれをつけてください」

 俺はおっさんと姉さんに『わたしは八本剣』と書いたタスキを渡す。

 スラリムとじじいには『わたしは宮廷侍従長』と書いたタスキ。

 それも金糸で縁取りをしたド派手なやつだ。

 たしかにこいつら推しカラーの法被やグッズを身に着けて目立つが、それだけでは足りない。

 自分も八本剣のタスキをかける。

 これで帝国軍は俺たちのことを八本剣と思ってくれるだろう。

 八本剣って書いているんだからな。

 

「こんなの意味あるのかな」

 スラリムは訝りながらタスキに頭を通す。


「すごいぞ。これで八本剣だってすぐにわかるだろう」

 おっさんは上機嫌でタスキをつけるのだった。

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