第146話 帝国第六軍将軍アズロー03

「それでは作戦を伝える。

 今、パトリック王国がどうなっているか知っているな」


「はい、なんでも革命が起きて王権が倒されたとか」


「そうだ。そして国内は相当に混乱している。

 政治家も不足しているが、いちばん不足しているのは軍だ。

 今、やつらに戦争をする力はない」


「しかし、あの国には八本剣と宮廷侍従長。

 それから辺境伯ウィラードがいます」


「八本剣と宮廷侍従長はみんな倒されたと聞く。

 それは帝国の諜報機関がつかんでいる」


「それなら」


「ああ、王都軍は素人の集まりにすぎない。

 ウィラードの辺境軍は多く見積もって千。

 帝国軍10万を相手にするには、いささか不足している」


「それでは総攻撃ですか」


「いや、そんなに簡単な話ではない。

 できるかぎり最小限の力で倒さないとならない。

 王国を占領したら共和国が出てくるだろうからな。

 やつらもそれを待っているのだろう。

 我々が王国と戦って疲弊したところに攻めようとするだろう」


「それでは最小限の力とは?」


「王国を作った軍師コウメイの話は知っているか」


「弱小国だったパトリック王国を兵法と数人の一騎当千の武将だけで、帝国や共和国と肩を並べる国にした伝説の軍師でしょ」


「そうだ。パトリック王国はそれからもその兵法に固執している。

 あの国は個の力で戦おうとするのだ。

 だから八本剣なんて制度を守り続けている」


「しかし、それはもう伝説にすぎないのでは」


「そうだ。現代の戦略において個の力に頼るなんて不合理極まりない。

 だが、王国は昔の成功体験に固執しているのだ。

 だから今回も同じ戦略をとる」


「といいますと?」


「ウィラードを中央から外して左翼に持ってくるだろう」

 わたしは今回の作戦の肝をゴーディに話し始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る