第145話 帝国第六軍将軍アズロー02

「ゴーディが参りました」


「入れろ」

 わたしの天幕に一人の男が入ってくる。

 待ち人きたると言うやつだ。

 背の高いひょろっとした男。

 顔色は悪く、見るからに悪人顔をしている。

 凶相というやつだな。

 こいつはゴーディ。

 中隊長の一人だ。

 

「アズロー将軍、なにかわたしに用ですか?」


「ああ、ちょっと頼みたいことがある」


「また、配置変えですか。

 俺しは前線で戦いたいのです。

 俺が何か軍規に反することでもしましたか?

 ただ、帝国のために敵を殺しただけです。

 それが戦争というものでしょう?」

 ゴーディは不満を吐く。


 そう、この前の戦争の後、こいつは後方支援に回されていた。

 それは軍規に反するというよりも、あきらかにやりすぎがあったためだ。

 相手の中隊をひとつ潰したのは良しとしよう。

 そのあと、ゲリラが隠れているかもしれないと言って3つの村を焼き払ったのだ。

 それもさんざん略奪や惨殺をしてからだ。

 それがこいつの趣味。

 弱いものをいたぶるのを楽しむ、クソ野郎だ。 

 前回、あまりにもひどいというので後方支援に回されたのだ。

 戦争というのは勝ち方も考えなくてはならない。

 あまりにひどいことをすると戦後の処理が難しくなる。

 相手はどうせ殺されるならと徹底抗戦の姿勢になるのだ。


 だが、こういうやつでも使い方はある。

 先鋒として使うと相手に大きなダメージを与えるのだ。

 ある程度のところで止める。

 そうすれば、敵もわたしたちの言うことを聞くようになるのだ。

 ゴーディはわたしたち幹部の中では狂犬と呼ばれている。

 要はこいつのリードをどう操るかだ。


「そうだな。君の言う通りだ。

 だから、わたしは君を預かったんだ。

 しかるべきときの切り札としてな。

 それが今だ。

 わたしのために、いや帝国のために戦ってくれるか」


「それは将軍がそうおっしゃるのなら、従うしかありませんが…

 しかし、やりかた、戦い方は俺にまかせてもらえるんでしょうか」

 まんざらでもないというように言う。

 ばかとなんたらは使いようだ。


「もちろん、作戦の範囲内で君に任せる。

 君にもう一隊まかせようじゃないか。

 これに成功したら、君を大隊長に推薦する」

 わたしはゴーディに期待を込めたまなざしをおくるのだった。

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