第10話 白銀美桜03

「どういうことだろう」

 この状況でも美羽がリーダーとして動いてくれる。

 美羽はひとつ年上で芸能界の経験が長い。

 だから、自分がなんとかしないといけないって思うのだろう。

 でも、わたしたちと違うところなんてない。


「異世界転移…」

 ぼそっと詩織が言う。

 たしかに漫画などでよくある異世界転移ってこんな状況になるんじゃない。

 本当なら王の間とかに召喚されて、説明を聞くことになるなるんだけど。

 現実はそんなにうまくいかないのかも。


「たぶん、そうだよ。

 なんかチートとか持ってたりしてね。

 もしかしたら、魔王とか倒しちゃうのかも」

 一夏は楽観的だ。

 この明るさにいままでどれだけ救われたか。


「夢?じゃないよね」

 佐那がほっぺをつねる。

 ぜんぜん、世界がもとにもどる気配はない。


「あれっ」

 わたしは気が付く。

 そう、なんかみんな若返ってない?

 たぶん、デビューした当初のころのわたしたちに見える。

 

「あ、本当に」

 みんな、わたしのいったことを確かめる。

 肌の具合とかさわっただけでわかる。


「それで、これからどうするかだね」

 美羽が話をまとめようとする。


「チュートリアルとかないのかな。

 説明的なセリフを言うおじさんとか」

 気楽な事をいうのは佐那。


 

「とにかくこれからのことを考えよう。

 なんか意見とかある人」


「まわりの人に話とか聞いて情報収集しましょう」

 一夏がそう言って、道に歩いている人に近づいていく。

 やっぱり行動派、体育会系だ。

 言葉も通じるかどうかわからないのに。


 むこうを見ると一夏が何か話をしている。

 そして、しばらくしてわたしたちのほうに戻ってくる。


「どうだった?」


「うん、ここはパトリック王国王都パルというところなんだって。

 日本とかアメリカとかヨーロッパとか知らないんだって。

 やっぱ異世界だよ。ここ」

 一夏は通行人から聞いたことをわたしたちに伝えるのだった。


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