第2話 始まりの文字
「いやぁ!悪かったな!」
204号室。嘔吐物を吐く憎い隣人でもあり、これから絆を深めていくだろう愛しき隣人は、僕の目の前で笑いながら謝っていた。
「いえ…シャワーありがとうございます」
嘔吐物を吐かれた後。僕は、彼「久我大義」に謝られ部屋に迎えられシャワーを借りた。
「しかし…今日からの隣人だとは思わなかった。名前は多鉢…なんだったか?」
「勇太です。多鉢勇太」
「多鉢勇太!良い名前だな。しかしこんな所に君みたいな優男が来るなんて。何かあったのか?」
「…いえ。ただのきま…」
「今日死刑だったろ。君」
「え…?」
「テレビでやってたよ。死刑執行日だったはずだがね」
「…」
まさかテレビでそんなことを放送してるとは。悪趣味だな。
「そうらしいんですけど。なんか急に浅草に行けって言われて」
「へぇ…まぁ治安は悪いとこだけどさ。仲良くしような。多鉢…誰だっけ?」
「勇太です。多鉢勇太」
「あぁ!そうだった。いやすまねぇな。人の名前を覚えるのは苦手なんだ!」
彼がそう答えると外で17時のチャイムが流れた。
「じゃあ…そろそろ帰ります。お邪魔しました」
「あぁ!すまなかったな。多鉢…えっと誰だっけ?」
「勇太です。多鉢勇太。はは…」
「あぁ悪いな!メモしておくよ。ありがとうな多鉢勇太君!」
僕は答えると扉を開け、部屋を出る。その時、彼「久我大義」は、メモ用紙に黒いボールペンではなく。赤いボールペン。血の様に真っ赤なボールペンで僕の名前を書いていた。
「205号室。怪しいくらいに綺麗だな」
僕の部屋205号室は、埃一つないくらいに綺麗だった。牢屋を長く見続けていたせいだろうか。怪しいくらいに205号室は綺麗だった。僕は205号室に入ると何故か用意されていた布団で寝てしまった。急に、ゲ…嘔吐物を吐かれて、疲れてしまったのだろう。
「多鉢勇太…大罪者か」
204号室で、久我大義は、名前を書き続ける。
「浅草で?俺の元へ?そんな事普通はありえない。ありえるとしたら」
転落死担当。憤怒の死神。そう憤怒の死神のこの俺の元へ彼が来た。
「吉祥寺って事は300人辺りか。しかし俺の元へ来たって事は。訳ありか。
「訳ありの大罪者、多鉢勇太」
赤い文字が、部屋に散る。俺「久我大義」の能力だ。
俺の殺害方法。つまり能力「転落死」は、他人の頭に大量の文字を入れ込む。その文字に相手は困惑。最終的に残る「転落死」という文字に縋る。そして死ぬ。戦争時に神が、死神達に与えた能力。
「多鉢勇太…覚えておかねぇとな」
その時俺の頭に3つの文字が入った。「死亡者」
「そうか…」
俺は一人納得し、かなり昔の新聞を調べ始めた。時代なんて知らん。
「見つけた」
2055年。戦争による死亡者リスト。一番最後に彼がいた。
2064年、午後23時6分、吉祥寺の刑務所で火事が起きた。ある一人の、看守による事故だ。
「何故…何故貴方がぁぁぁぁぁ」
ある肥えた男が、ある男に疑問を持ちながら焼け死んだ。
「…何故?」
決まってんだろ
「戦争だよ」
痩せ細った男は笑みをこぼす。彼の名は。
「もうすぐ始まる」
大量の火の中、彼は言う。彼の名は。彼は吸っていた煙草を捨てる。この火で笑う悪魔の名は「都祁孝二」ある大罪人の看守だった男。
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