#43 怪物/Cannibal
「渚先輩の部屋は!?」
「404。さっさと行くよ。ただでさえ見られたらやばいんだから。」
「それにしても、ありがとうございます。氷雨先輩。」
「なーに、たまたまよ。たまたま…ね。」
エレベーターの中で、氷雨先輩と渚先輩を404号室まで運んでいる。
先生は置いてきた。僕が様子を見てくると言って。
「そういえば、氷雨先輩って銀眼なんですね」
「そうだった。今日は休日でカラコンするの忘れてた。」
「……先輩ってもしかして…吸血鬼ですか?」
「……これは持病だからね。吸血鬼じゃないけど…なんで?」
「…銀眼は吸血鬼の証だと……」
「あれ、まだそこは習わないはずじゃ……予習でもしたの?」
「いや…」
『4階でございます』と機械音声がエスカレーター内にアナウンスが入る。
「…行こうか。」
「…はい。」
なんか、この先輩は少し怖い。なんだか…単調?というのだろうか。何事にも淡々と取り組みそうな人だ。
先輩はエレベーターホールから出て、【すぐさま】左に曲がった。
「ここが…渚の部屋?」
「扉が…壊されている?」
「だね。根本からイッてるなぁ」
「じゃ、まだ敵が…」
「いる意味ないからいないだろうね」
お邪魔しまーすとまるで友達の部屋に入るようなテンションで部屋に入って行った。そんな悠長でいいかよ……
「ぅ……」
と、背負ってる五体満足な渚先輩から声が聞こえてきた。
「渚先輩!?」
その瞬間、口に手をかぶせられる。
「葵君。」
その声は今までよりも、真面目な声で。
聞いたこともないくらい、真剣な。
そんな声だった。
「にげろ」
【刹那】、体は反射的に動いていた。
外に二人。
氷雨先輩には申し訳ないけど、こうやって逃げるしかない。
「伏せて!」
勿論、伏せたのはいいが。
コインが飛んできて、壁に埋まる音が聞こえる。
いやいやいや。おかしいだろ。
「おい!お前らなんだ!誰だよ!」
「俺らは、シュビュトだ。世界の安寧のために、ここにいるという舟橋渚を捕獲にきた!」
「だったらお気の毒に!さっき私が殺したよ!ほら!やるよ!!」
と、氷雨先輩は、さっきの死体をそいつらに投げた。
「そんじゃあ、さっさと失せな!」
と、さっきの言葉遣いからは想像をつかないほどの口の悪さを発揮して、シュビュトに中指を立てた。
段々、わかるようになってきた。【演技】というのは、自然につながるとわかりにくい。
「……【
「は?」
突如として。
コインは起爆。僕は、その爆発に巻き込まれた。
4階から、爆破の勢いで飛ばされた僕は、地上へそのまま自由落下。
頭は死守したが、落下の勢いで、一瞬気絶する。痛みが体に染みる。
「……てくれるなぁ…泉岳寺さんよぉ?」
「当たり前だ。挑発には乗っておくが吉って今日の星座占いにあったからなぁ!!」
「んなもんあるかよぉ!!」
「……【
突如として、戦闘が始まってしまった。
あれ?渚先輩はどこに??
倒れた衝撃で忘れていた。
「葵邪魔!!」
「【
またもやコインが吹っ飛んでくる。
【遅行】しても、避けるのができそうにないくらいに速い!!
その瞬間に空間に氷が出現し、コインの軌道が変わる。
「助かりました!」
「さっさと逃げな!死ぬぞ!」
その【遅行】中、渚先輩を見つける。爆発に巻き込まれた影響なのか、複製体がいくつもいる。
まさか、そういうことなのか?
「渚先輩!大丈夫ですか?!」
「……喉、渇いた……」
「渚先輩、今はそれどころじゃ……っ!」
顔を今更、ちゃんと見た。綺麗な顔立ち。少し大人びた顔をしている。そして、銀眼であり、少し空いた血色のいい唇の間から見せたのは、尖った八重歯を持つ…
「血……飲ませて♪」
紅潮した頬が、目元が、口元が、笑っているのは、抑えていたものが抑えられなくなったから。そして、血を吸うことは、彼らにとって、快感でもあるのだろう。
そう。【吸血鬼】である彼女は、血を吸わなきゃいけない生物だ。
だけれども、僕は反射的に、渚先輩の複製体の腕を掴んで今、まさに血を吸おうとしている彼女の口に押さえつけた。
すると、彼女は彼女を掴み取り、口元にあるその肉に噛みつき。
肉を噛みちぎった。
まるで、人を食べる鬼みたいに。
妖怪とか、怪異とか、怪物を見ている気分だった。
僕たちが肉を食べるように、彼女のまた、目の前の肉を食べるだけだ。
「おいしい♪次は?」
その肉を平らげた後、僕に向かって言ってきた。まるで僕が【
「…じゃあ」
僕は、シュビュトのやつを指さして。
「あいつなら喰っていいよ、邪魔だから」
「それじゃ……いっただきまーす♪」
彼女は怪物と化した。
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