#30 揺らぎ
「何してるの?」
その声を聞くのは、久しぶりでもあり、嫌だとも思った。
「…柚音…」
「ダメじゃないですか、ここは風雲高校ですよ、中学生が来てはいけないんですよ。っていうか、どこから入ったんですか?」
霞はそう説教じみたことを言い始め、彼女に触ろうとするが
「いいんですか?触って」
そう言いながら彼女は左耳のピアスを揺らした。
「霞、ダメだ!!」
【刹那】
彼女の体躯は真っ赤な炎に包まれた。そして…
「久しぶりだから、加減がわからないなぁ」
彼女は消えていった。
「あ、消しちゃった」
「は…?」
「あっははは!そんな顔しないでよ!たかが一人いなくなっただけなんだからっさ!」
彼女の周りに炎が展開し始めた。
『炎魔・周界』
「…お前らって頭おかしい奴しかいないんだな」
「当たり前でしょ!頭のネジ外れてなきゃこんなことできないよ!」
「いや、違うな。」
【刹那】
「俺も可笑しいんだった」
「なっ!?」
左耳を目掛けたパンチはピアスを揺らしただけで壊すことができなかった。
彼女は体勢を崩したが、俺に向かって炎は向かってきている。
…俺の好奇心が当たったらどうなるかを考えていた。
さっきはあいつの知り合いは燃えて消えたな。そんな火力あるなら、他の方法があるだろう。例えば、建物ごと燃やすとか。
なら、当たったって、問題ない。
当たった瞬間、何かが脳に巡った。これは…記憶?
踏切の音
劈く悲鳴と、生臭い匂い。染まり切った視界はすぐさま、閉じた。
…なんの記憶だ?
「へぇ、君は相当なことを隠しているんだなぁ」
「…どういうことだよ?」
「わからないの?」
「あぁ。お前が見せた幻覚かと思ったぜ」
いや。違うな。悲鳴が上がっているのは明白だ。外から見れば今は火柱が上がっているのと同義。
火事だと思った外の連中は悲鳴やらなんやら叫んでいるんだろう。
「それじゃそろそろ、目標に行こうかな」
「尻尾巻いて逃げんのか?」
「当たり前でしょ、目的は君じゃないしね」
「……誰」
「舟橋」
「行かせるかよ」
突如炎が消え、逃げると悟り、追おうと走った刹那。
『崩れろ』
と、声が聞こえた途端、いきなり俺の目の前の天井が崩れ始めた。
「今度はなんだよ!?」
と、砂煙を払う。
目の前に瓦礫をよくみると、一つのガラクタに、お札が貼り付けられていた。
「願いを叶える…札か。基準の通りなら……あと二枚になるのか」
願いを叶えるのは
*
「ってことで…」
「って、ちょっと!どうなってるのさ‼︎」
千寿は声を荒げる。
「どうなってるって…」
渚は腕を広げた。
「逃げてきただけ。私たちはすぐに逃げれるようにこうやって準備をしているから。」
「だからって…こんな、辺鄙な場所に集まんなくたって…」
双はいまだに扉の様なものをいじっている。
「…いいか、君たち。こういうのは想定したもん勝ちだ。私は今、ここから逃げれるルートをいくつも確保している。その中でこれが一番合理的で、安全だからここにいるんだ。」
「…大江さんが言うと、全部ガチに聞こえちゃうからやめて欲しいんすけど…」
「ガチのマジよ。おおマジ。逃げないと巻き込まれるしね。ただ…」
「…一年生のことでしょ?」
「おおぉ、さすが双。わかってるねぇ」
「お褒めに与り光栄だね、っと。鍵開いた。誰から行く?」
「…私からでもいい?」
「いいよ、できるだけスムーズにな」
『逃走禁止』
突如、学校内の放送で流れたその声は。
私たちの手段から、「逃走」を無くした様に聞こえた。
そう、逃走が強制的にできなくなったのだ。
まさに禁止事項。
「チッ」
「遅かったか?」
「いや、対策は相当早かったはずだ。しかもこの声…」
「あの3年の…」
「あぁ。あの、へっぴり逃げ腰野郎の声だ。」
「…誰ですか?へっぴり逃げ腰野郎ってのは」
「…渚が唯一嫌っている、演劇部の部員ですよ」
「あぁ、今すぐにでも見つけてボコボコに殴ってやりたい。」
「…いいね、俺もやりたくなってきた。」
「さて、後輩が戦ってるのに、私たちが戦わなくてどうすんだって話になってしまうか。」
「…もしかして、皆やる気満々?」
「…そうなんでしょうね、きっと。」
そんなことを言っていると、一人の男がそこに現れた。
「や。久しぶりだね。【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます