#27 土壇場

 5/4。

 柚音が帰ってこない。

 もう、二日も経っている。あの日に、真夜中まで探した。だが…


 *


 5/2。

「柚音ー!?どこー!?」

「おい、何してんだ」

「あ、刑事さん、妹が!」

「静かにしろ」

「え?」

「吸血鬼が出た。大きな声を出すと、見つかって殺されるぞ」

「吸血鬼なんてっ」

「いくぞ、死にたくなきゃ走れ」


 そうして走り、彼らの拠点に来ていた。

 【ダイヤ支部ライト区】という、看板を横目に、そこに入った。


「さて、これで周囲の人はあらかた片付けたかな。」

「はい、こちらも対処できました。」

「了解、目標は?」

「二体です」

「俺が行く。麗桜はそいつの護衛頼む。」

「了解」


 と、確か、海斗さんと呼ばれていた刑事が空間から白い剣を掴み、外へ走っていった。


「君、名前は?」

「火車…奏音…です」

「火車…!?」


 彼女の顔はいきなりすごい形相になった。


「いくつ!?」

「16です」

「妹はいる!?」

「はいっ!」

「名前は!?」

「ゆのっ?!」


 名前を言おうとした瞬間、近くにあった、窓が割れた。


「くっそ!」


 1発、2発。


 銃弾はしっかり命中していると思う。なのに、全く倒れる気配がない。


 まるでゾンビだ。打たれても、打たれても、進み続ける。


 かちっ、かちっと音が、する。

 なんの音なのかわからない。けど、明らかにおかしいのはわかる。


「奏音!弾倉わかる!?」

「わかんないです?!」

「わかんなくてもいい!!なんか投げろ!!」

「んな無茶な!!」

「自衛できれば上々だ!2秒しのげ!行けるか!?」

「やんなきゃ死ぬんでしょう!?やりますよ!」

「たのんだぞ!!」


 彼女は2秒、ここを離れる…!

 その間…私は生きていれば!!


 近くにあった、灰皿、箒、本を倒れないようにするやつ、なんでも投げた。


 が、抵抗虚しく。


 窓ガラスが破られた。


 後ろだ。

 もう一匹が入ってきた。


「麗桜さん!!!後ろ!!」

「きゃあぁぁぁ!!!」


 目の前に一匹、麗央さんは襲われて、首を噛まれている。


 麗央さんの手から落ちた銃は順調に私の元に落ちてきた。

 銃と、何か弾が入ってそうなやつ!

 それが、今手に届く。なら……


「やってみせろ、やらなきゃ死ぬぞ!!?」


 もはや狂乱状態。初めて使う銃をリロードして見せるなんて、できるはずがなかった。

 そうだろう。吸血鬼はもうすぐそこ。

 ほんの数秒でリロードして、相手を怯ませる??


「でも」


『やって見せてよ。奏音、君のその【】。』


「やってやるよ!!!」


 1発。


 銃弾は、口を開けて首を開けていた吸血鬼を怯ませ、サイレンサーを外したことにより、麗桜さんの気を取り戻せて、海斗さんに異常を知らせた。


「奏音、ナイス!!」


 麗桜さんは吸血鬼を体術だけで潰して、私の銃を引っ張り、そいつの首元に撃った。


「麗桜、大丈夫か!?」

「あぁ、奏音の助けがなかったら死んでいた。外の吸血鬼は?」

「やった。そっちもやったみたいだな」

「あぁ、奏音、よくやった。休んでろ、疲れたろ。」

「あぁ、いや、まだ…」

「麗桜、言い方が違う。」

「でも…」

「吸血鬼を燃やす。外にくくりつけてくるから、お前は来るな」

「……了解です」


 それがあってから、吸血鬼がいる理由を聞いた。


「カバーストーリー!?」

「あぁ。吸血鬼はこんな日…新月の日に出てくる。昔の詩の通りだ。」

「そんな…」

「…それで、さっき麗桜から聞いたが、お前の妹、名前はなんていうんだ?」

「柚音、火車柚音です」

「了解だ。そいつは俺たちも探している」

「そうなんですか!?」

「海斗さん…」

「…あぁ、そうだ、夕方の時から学生…葵に聞いていた。そいつの居場所は?と。」

「どこなんですか!?」

「敵に攫われた、もしくは消えた。」

「そんな…」

「…まぁ、少なくともこんなとこで待ってちゃ、帰ってこないわな。…家に帰してやる。車に乗りな」


 そうして私は警察たちの護衛のもと、帰ってきたのだ。

 妹は、どこにいったのだろうか。


 *


 窓を開けると外からは、雨の匂いがした。


「そういえば、今年は早梅雨だっけ…」


 緩やかに流れる雨雲を見ながら、そろそろ天気が変わりそうだなと思い、洗濯物を取り込む準備をしようと意気込んだ。


「あ、そういえばあの時、ずっと寝てたのにどうして家わかったんだろう。……ま、いっか、警察だしなんでも知っているんでしょ」


 窓を開けていると、朝の寒さが部屋に入ってきてしまうので、空気の入れ替え程度にしておこう。

 そう思い、窓を閉めた。

 リビングから流れるくるテレビの音はニュースを放送している。朝の天気予報だ。

 この地域一帯には、雨が降るらしい。

 ……風邪、引かないといいけどなぁ。

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