#25 新月ノ夜

「……暗夜、いや、今回は…長夜になる」

「そうだね。寒くなりそうだから、あったかくしていいか?」


 そう、彼女【渚】は魔界を唱えた。


『封魔・近界』


 そして、三身は結界の中へ。


「おー、すごいね、渚お姉ちゃんはできるんだね」

「お姉ちゃん、だと?」

「そうだよ、生まれ故郷が一緒じゃないか」

「一緒?吸血鬼は人間と違って嘘が下手だねぇ」

「……そうかもなぁ!?」


 相手の吸血鬼の片方は、小刀を持っている。

 もう片方は、上の方で弓矢を持っている。


 さて。 るか。


 上のやつは、矢を頭に、小刀の方は、腹に刺すんだろう。


 走ってきた方は…


『潔く受ける』


「おらぁぁぁぁ」


 小刀は、右脇腹に刺さった。

「…え?」

 直後、足払いをして、そいつを転ばす。

 そして、小刀を引き抜く。


 直後、矢が飛んでくる。が、小刀で防ぐ。

「狙いはいいねー」


 小刀についた血を舐める。私は血が好きだ。


 ……よし。傷は塞がった。

 動いて大丈夫だ。


「おい、返せ!」

「頭、貰うよ」


 地に伏したそいつの頭を掴み矢が飛んでくるであろう場所にそいつを持ってくる。


 そいつの頭に矢が刺さり、それを確認してそいつを捨てる。


 次は上だ。

 小刀を投げると、当たれば勝てるが当たらなかった場合、あっちが有利だ。

 なら…


「解除するか。」


 *


「おーい??死んだか??」


 界が解けてから数分、あいつの姿が見えない。


 ビルから降りて、ヤクラを探す。


 地上は渚がいるが死んだかもしれないなら別だ。ヤクラは…


 街路樹のそばに頭がない状態で倒れていた。


「…悪魔…」


 なら…生きてるんだ!?


 そう思った瞬間、意識は消えた。


 *


 やっと切れた。

 それじゃ、この頭は適当に投げて…。

 木の上に潜んでおくか。


 後、来てから殺せばいい。

 来たら、木に足を引っ掛けて、惰力で体を吊る。


 その勢いでこうやって、刺す。


「よし。」


 首元に小刀を刺したので、起き上がらないだろう。


 勢いをつけて、木から降りる。


「ふぅ〜、疲れるな」


 久しぶりの襲撃だったが、前みたいに数の暴力じゃなくてよかった。


 死体二つをその場に置いて、その場を後にする。どうせ、太陽が出たら焼かれるだろう。


 ……その前に、やりたいことをやっておくか。……?


 *


 2028/05/02-吸血鬼File

 千秋楽の街中に2体の吸血鬼が出現。通りすがりの吸血鬼ハンターか何かに殺害されて、街路樹に横たわっていた。そのうち片方は、頭を刎ねられていて、もう片方は首に得物が刺さっていた。

 また、両方の腹、足、腕などの肉は何かに食べられた跡があった。

 また、吸血鬼に血を吸われたような跡があり、共喰いの被害に遭った可能性がある。

 __担当:細谷

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