#19 第三勢力

「おらぁぁぁっぁぁ!?!!」


 視界も聴覚も、使えなくして、場所までランダムに飛ばしたはずなのに、【仇】が帰ってきたらと思ったら、窓から何かが飛び込んできた。


「怪盗・マリン参上!」


 と、謎に自己紹介を始め。


「ここにあるはずの【魔法のランプ】をいただきにきた!!」


 と、自分の目的をペラペラ喋り始めた。


「…あんな、典型的な怪盗がいるとは思わなかった」

「…うむ。あんなのに奪われるなら、お前たち【三人】のところにいたほうが良いだろうな」


 とフィラーオネが言った。


「おい!そこのランプ持ってる女!ランプは俺がいただく!覚悟しろ!」

「あっそ、奪いにこれるの?あなたみたいな“馬鹿”に?」


 そう言って、僕はフィラーオネに聞いた。


「フィラーオネ、僕の能力は?」

「そうだな…簡潔にいえば…」


 その、怪盗マリンとかいう奴がこっちに向かって走ってきた。


「『不幸に巻き込まれやすくなる』だ」

「は?」


 *


 僕は、何が何だかわからなかった。

 いきなり、一人の怪盗みたいなやつが窓を突き破ってきて、ランプを奪いに行こうとしたのだが。


 その瞬間、周囲が燃え上がったのだ。


 まるで火事かのように。


 そして後ろから、誰かに殴られたのだが。その衝撃で一瞬気を失ってしまった。


 気を取り戻した時。入り口に歩いて行く姿は…


「…ゆのん…?」


 その声で足が止まった気がした。


 *


「海斗さん!今すぐきてください!」


 なんていう電話がきて、早足で戻ってきてみれば。


「なんだこりゃぁ…」


 その建物はもう火の海だった。


麗桜れおさん!なんでこんなことに…!?」

「突然、【界】に閉じ込められたんです。」

「【界】に?」

「はい。相殺して、脱出できたんですが、なぜか外にいたんです」

「そして、その後に炎上を始めたと?」

「はい。…ですが…」

「なんですか、はっきりしてください」

「一人、中に入れてしまいました」

「この建物内に?」

「はい。なんか…動くのがすごくはやくて…」

「その子…指輪とか、つけてませんでした?」

「…つけて…ました…!」

「っく!!」


 俺は、その建物に入ろうとしたが。

 【それ】を見た瞬間、笑みをこぼしてしまった。


「よくやった、葵」


 黒く煤けた彼の体にはさまざまな傷があったが。横にいた二人の女は全くの無傷だった。


 *


「それで…軽く話を聞いた限り…」


 三つの組織が、ランプを奪いにきていた。

 そして、そのうち、一番人数が多かった組織にランプは奪われて、もう一つは逃し、最後の一つは、葵が無傷で回収してきたらしいが。


 俺の見立てでは。

 ランプを奪った奴らの中に。

 俺らが【発火魔】と呼んでいる、【特定危険能力者】がいる。

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