#03 憧れは止められない
「…何言ってんの…?」
「え!?ボクなんか変なこと言った?」
「言ったでしょ…」
「あれ…じゃ、ボクの勘違いだっけ?」
「勘違い?」
「いっつも【4人】で遊んでたじゃない」
僕と妹と幼馴染ともう1人?
「あー、でもいかんせん昔の話だしなぁ。ごめん勘違いかも」
「……」
もう1人。
「そいつ、名前覚えてるか??」
「え、名前?」
「そう、なんか【名前を聞けば思い出せそう】な気がするんだよ」
「…偶然。ボクもそんな気がするの。ということはどっちも名前を覚えてないね」
僕の昔の記憶はかなり曖昧だ。まるで【何者かにぐちゃぐちゃに混ぜられた】みたいに、覚えている記憶と覚えていない記憶が断続的にあり、時系列順に並んでいない。
これが普通の人間の幼少期の記憶の残り方ならいいのだが。
残念ながら、今の僕は普通じゃない。
もう、【
*
その後、三人で夜を語り明かしたのだが。
色々面白いことがあった。
まず、霞。
彼女は、引っ越したのは、小学3年生だ。
それからこっちで過ごしていたが。
ここの地域で、『女王さま』と言われるほどこの地域の男を虜にしたとか。
相変わらずとんでもないカリスマがあるらしい。
彼女曰く、いつもテンション高く接していたらなんか勘違いいしたやつがこぞって付き合ってほしいと近づいてきたから、全て振ったらしい。
精神力がすごい。
きっと、男のことを面倒臭い生き物としか見ていないのだろう。なんで彼女が僕との関わりを残しているのが1番の謎だ。
それでも中学では彼氏を作ったらしい。一悶着あって別れたらしいが。
僕と同じじゃないか。……僕はその話を話していないが。
渚先輩は、演劇部に所属しているらしいのだが。その演劇部に自分のことをライバル視してる奴がいるらしい。しかもそいつは結構意地汚く、嫌がらせをしてくるらしいが。
この前、全てを先生に見られて、そいつが停学中らしい。彼女曰く、そんな停学にするほどではないらしいけど。
そいつの名前は、四ツ谷翼。
高校演劇界では有名らしい。僕は知らない。
渚先輩が演劇する前はチヤホヤされていたが、渚先輩が演劇を始めるととんでもないスピードで成長して、あっという間に翼を抜き去っていった。
それゆえの翼の嫉妬、なのだろうと僕は思った。
なぜそうなってしまったのかなんてわからないが。
どうやったって、追い抜かせない存在は、すこし憎いだろう。
その翼にとって…
そんな妄想をしていた時。霞が。
「そうだ!葵も演劇やったら〜?」
「え、僕が!?」
「…いいかもね、私みたいに才能があるかもしれないし。」
それ、本人が言っちゃうの?
「…才能…ですか」
あるかないか、それだけで決まるのが演劇の世界。
きっとそんな世界に入ることは、チャンスがあっても門が狭く、選ばれた人間しか入れない、そんな世界。
「あでも、葵はまず家に荷物を置いてからだね。」
「そうだったわ」
*
そんな演劇の世界に。
僕は足を運ぶことになった。
入学式。
長ったらしい校長やらの話を聞き終わり、あとは生徒に任され、その中で、演劇部による、歓迎演劇がある。
演目は、【アラビアンナイト】。
とある青年、アラジンがレイラ姫とお近づきになるために、魔法の洞窟にある、魔法のランプを探しに行く。そのランプの中の…
『そう!オイラはランプの魔神さ!ご主人様の願いをなんでも叶えてやるよ!』
渚先輩のこの前の声量からは考えられない大きい声を出し、普段とは考えられないテンションをあげ、まるでそこにランプの魔人がいるように…!
僕は…その演劇に見惚れてしまっていた。
「……やってみたい…!」
そして、そう思ってしまっていた。
『それじゃ、オイラがその願い叶えてあげる!』
演劇は続く。
*
「で?演目は【アラジン】だっけ?」
「えぇ、そうです」
「あいつもよくやるよね〜、こんなオンボロな場所でさ…」
「それで、計画ってのは??」
「新入生が入った後の初の披露宴は六月くらい。演目はきっと【オペラ座の怪人】。」
「はい…」
「ラストシーン。そこであいつの命に終止符を打つ。」
「…了解しました」
「頼むよ。【裏切り者】くん?」
薄暗い、一つの部屋の中。
その中で、彼女がつけているアクセサリーが怪しく光った。
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