#02 霞んだ行方
「それで??結局予定より三時間遅れてこっちに着いたわけだ。」
「…はい、その通りです…」
現在、20:18。
【幼馴染】の
「というか、そんな事件に遭遇しているのなら先に言ってくれたらよかったのに」
「……連絡する暇はなかったんだ」
「……妹ちゃんがいないこと??」
「あぁ」
もちろん、僕と妹の2人で来ると言っていたのでいないことに気づくのは当たり前だ。
ラーメン屋の小さなテレビでもニュースが流れている。今日のテロのニュースだ。
誰も乗っていない列車は次の駅に着いた途端、NEAの人間約30人の銃撃により、列車はペシャンコになった。
そして、証拠隠滅の爆弾により、この駅は破壊。この駅と列車は運行禁止になり、現在も死傷者がいないか捜索が続いているらしい。海斗さんでも爆弾は突き止められなかったのか。
「ま、迷子になってるって可能性もあるでしょ??」
「それが……連絡つかないんだ……ずっと。」
茜とはずっとこちらから連絡をとっている。なのに返信は来ない。
彼女に身に一体何が起こったのだろう。
それはまだ、わからない。
*
「それで、僕は今日どうすればいいの?」
「んー…家はもうあるけど、寝る場所はないし…ホテルかなぁ…」
「ホテル泊か、まぁしょうがないと言えばしょうがないか。」
「……あぁ、ごめん…」
「え??」
「予約取れないや……」
「……え??」
その後、近くのホテルをしっかり回ったが、どこも空いていなかった。
「……どーしましょ」
「本当だなぁ、僕は野宿でもいいけど霞はそーゆう訳にはいかないでしょ」
「葵もでしょ!?15で野宿とかしない!!」
そう。僕も霞も15歳。若いと言えば若いだろう。
そんな歳から野宿なんて経験するのはダメだと牽制された。
「と、いうわけで。」
「本当にいいのか??僕だって男なんだけど…」
「別にいいよ、特に問題はないし」
「そーゆーことじゃないんだよな…」
結局、霞の家に泊まることに。
霞は僕が泊まることに何も抵抗もないらしい。……それもそれでなぁ…。
「ん、いらっしゃい」
「お邪魔します…」
意外に広いな、というのが第一感想。ベッドと机、本棚用のカラーボックスが一つ。クローゼットが壁に埋め込められて、あとは特になんもない。
「……シンプルな部屋で」
こういうのが、ミニマリストっていうのだろうか?
「そーでしょ、色々あるの嫌いだからさー」
と、彼女はクローゼットの奥から、アルミレジャーシートを広げた。
「ま、葵はここで寝てもらって」
「あぁ、うっす……」
一瞬だけでも期待してしまった自分を殺したい。いや、霞はそういう
と、自分の煩悩を殺したことによって、意外にあっさり承諾できた。
だとしても。こいつは家に1人の男を呼ぶことに抵抗がないよな?
まさか?まさかな…
「葵はお風呂入る??」
「え、まぁ入りたいけど…」
「服は??」
「ない…というか買う予定だった」
「そっかー…じゃ、ボディシート貸すから体拭きな。ボクはお風呂入ってくるからー」
「りょうかいー」
と、彼女は色々持ってバスルームに入って行った。
「あ!」
「ん?」
「先輩きたら部屋に入れといてね!!」
先輩??
「ちょ、誰その人!!」
と、言ったが、彼女はもう湯煙に巻かれて行った。
彼女は先輩が来たら、部屋に入れておけと言った。色々考えた結果。
「大丈夫か。多分」
と、考えるのをやめた。
*
数分後、ドアチャイムが鳴った。
ドア窓から覗くと、綺麗なお姉さんが立っていた。
短髪に、僕よりちょっと高い身長。綺麗な顔立ち。
あぁ、“先輩”だなと一目で分かった。
そして、ドアを開けて、先輩を迎える___
「……」
「……」
その先輩と目があって、数秒。
綺麗な目鼻立ち。髪の色は、少し青みがかった黒。眼は、真っ黒でこちらをまっすぐに捉えている。驚いているのか、口が半開きで、普通の人より尖った八重歯が見えている。
双方の呼吸の音しか世界にないんじゃないかと思った時、先輩は口を開いた。
「…間違えました……」
「ちょ…合ってます合ってます!!」
おい!?
「あっている……ということは霞の男?」
「ひでぇ言い方……霞の幼馴染の橘花葵です。」
「あぁ、幼馴染って…君ね。うん。私、舟橋渚。霞の先輩……になるのかな?」
「なんで疑問型…とりあえず、中、入ります??」
「うん。そうしよう。3月の夜は寒い。」
そうして。見知らぬ家で、見知らぬ人と2人きりというとんでもない状態になってしまった。
ほんとこれどういう状態なんだ。
「……でも、どうして幼馴染の君が霞の家にいるんだ?」
「それは…」
これまでの経緯を話した。
引っ越す過程で、事件に巻き込まれたこと。
そのために手前の駅で降ろされ、代理のバスでここまできたこと。
……妹が行方不明になったこと。は、言ってない。
「なるほどー…」
「……」
「……」
「…あの。」
「なに??」
「会話下手くそですか」
「!?」
彼女の顔は驚いた様子に染まる。わかるだろ。
「さっきから何か聞いて、僕が話して、先輩が“なるほど”って言って会話切れてるんですよ!もっとなんかないんですか!?」
「なんもないな。聞きたいことだけ聞いて何が悪いんだ」
と、まるで取材のような会話をこなしながら、霞が上がってくるのをまっている。
あいつにはしっかりと説明するという機能が備わっていないらしい。
「…そう言えば、君、妹がいるんだろう?」
「えぇ。いますが…霞に聞きました??」
「連絡…つかないんだってな」
「…はい」
「気持ちは、わかる。私の妹も急にいなくなったりしたしな」
「え」
「…顔を見せてくれ。知り合いに見つけたら報告するように広めてやる」
「…はい。これです。」
と、僕は何故かすごく信頼を寄せてしまったこの先輩に、妹である
髪は黒で毛先だけ赤に染まっている。長さは腰より高い。服装は中学校の制服。後ろには卒業式と書かれた看板があり、彼女は笑顔でピースを向けている。
顔は化粧をしていつもより綺麗に写っている。瞳は笑顔で見えない。が、いつも見ているからわかる。彼女の瞳は【銀色】だ。
隣に立っている僕は、黒の短髪で、瞳は黒。服装ももちろん中学の制服だ。なので全身真っ黒である。顔はあまり楽しそうに見えない。
と、その卒業式で母親に撮ってもらった写真を先輩に渡そうとした時。
「あーー!!それ、葵の写真!?!?」
と、霞が風の如く奪い取って、目を輝かせて写真をマジマジと見る。
「あーー、やっぱ、変わんないなぁ……」
と、独り言を呟いている。
彼女は妹のことを相当愛でていたため、自分の妹のように扱っていた。可愛い可愛いって。
「葵と茜ちゃんと【もう一人】って誰だっけ??」
いきなりすぎる、彼女の質問に僕はたった一つの音しか返せなかった。
「は?」
その音は疑問と何を言っているのか?という謎を問いかける意味を孕んだ音だった。
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