たまには頭使ってクエストに挑みますか
『ユニーククエスト:
「おっ……」
何か珍しいクエストが来るとは予想してたけど、まさかユニーククエストとはね……相当難しそう。
にしても、『ラ・クンパルシータ』ね……元々は仮面舞踏会じゃなくて『仮装行列』みたいな意味だったと思うから、なんかイメージ全然違うけど……気にしたら負けか。
「『
「平民でも参加できるの?」
「場合によっては、じゃな。参加条件としては、『他の参加者からの招待状を持っている』こと。余程のことがない限り、平民は参加できないがの」
「まぁそうよね……」
身分や素顔も隠してのパーティなのだ。変な相手を招き入れることが無いようにするための措置だろう。
「私がお主の招待状を用意すれば問題無かろう」
「えっ、ティターニアちゃんって
「私は王族じゃからな」
そう溢すティターニアちゃんの声は、何か忌々しい過去を思い出すかのようなものだった。
もっと詳しくティターニアちゃんから説明を聞いていくと……会場に入る前の荷物検査、さらには武器の持ち込み不可、会場内でのインベントリの使用不可、攻撃系アビリティの使用不可など、規制は多岐にわたるらしい。
「待って。ってことは、いざ戦闘になったら、武器も鎧もインベントリも無しで戦えってこと!?」
バフ系のアビリティは使えるとはいえ、元々武器を駆使して戦うタイプだ。しかも、さすがにパーティに鎧を着て行くわけにもいかない。武器無し鎧無しで素手で殴れと?
「戦闘に入る必要がある時点で計画は失敗じゃ。目的はあくまで、ウェルブラート辺境伯から情報を引き出すこと。下手に手を出すでないぞ?」
「カローナ様、ムカついても手を出したらダメですわよ?」
「あぁ、ついにセレスさんまで私を脳筋だと……」
なんかちょっと悲しい……。
「しかし、辺境伯が素直に喋ってくれるのでしょうか? いくら仮面舞踏会で顔が見えないとはいえ……」
「そこも考えなければならないのう……」
「【
「あれは人には効かないと言っていませんでしたか?」
「プレイヤーは操れないけど、NPCはどうかなって……それか、臭気を吸い込んだだけじゃ効かなくても、原液をそのまま飲ませたらワンチャン……」
「あれほど姿が変わる技など、使えばすぐに警備が飛んでくるのじゃ。やらない方が懸命じゃの」
「うーん、そっかぁ……」
じゃあどうしようか……。
自白剤みたいなのがあったとしても、入場前にチェックされるから持ち込みは不可能。かといって、アビリティを使えばバレる。
その場で薬をつくる? それも、アビリティ無しで……。
そんな知識があるわけないしなぁ……知識があっても材料もないし。
「うーん……」
「ラ・ティターニア様。仮面舞踏会には、アクセサリは持ち込めるのです?」
「ん? うむ、顔が見えない分、ドレスや装飾品で飾るのが普通じゃ。入場前の【鑑定】検査が通れば、アクセサリを着けた状態で入ることは可能じゃな」
「でしたら、アクセサリに【
「そ、それだぁ!」
【
ついでに私はまだアクセサリの枠は余ってるし……この案が一番いいかもしれない!
「ただ【鑑定】されるとなると、そこでバレてしまいますわね」
「ヘルメスさんは『
「その辺りもヘルメス様に相談ですわね」
「上手く事が運べそうかの?」
「うちの錬金術師に相談するけど……上手くいくか失敗するかは五分五分かしら。ダメなら次の案を考えるわ」
「頼むのじゃ。さて……そろそろ戻らねばな、あまり長く席を外すわけにもいかぬしの。ついでに、カローナよ。お主を今からウェルブラート辺境伯に会わせるのじゃ」
「えっ……それって大丈夫なの?」
「うむ。と言っても、私が二、三言葉を交わして終わりじゃ。お主は
「あー……ってことは、その間に辺境伯の声とか特徴を覚えろってことね」
「話が速くて助かるのじゃ」
「オッケー、そういうの得意だから!」
♢♢♢♢
「ウェルブラート辺境伯よ、息災かの?」
「これはこれは、ラ・ティターニア様。ご機嫌麗しゅうございます」
ティターニアちゃんが声をかけたのは、絢爛な服に身を包んだ、服の上からでも分かるほどにガッチリした体格の中年男性。鋭い眼光や隙のない立ち振る舞いは、ティターニアちゃんが『武闘派』と称するほどのものがある。
種族は……なんだろう。
首元にちらっと見える鱗のようなものや縦に割れた瞳孔からすると、もしかしたらリザードマン……もしくは竜人かもしれない。
「堅苦しい挨拶は良い。国防の要たるお主には助けられておるのじゃからのう。……どうじゃ?
「今のところは変わった様子はありませんよ。……しかし、空に居る
「うむ、分かっておるのなら良い。頼りにしておるぞ、ウェルブラート辺境伯よ」
「お任せください」
優雅に一礼するウェルブラート辺境伯に、ティターニアちゃんは軽く手を上げて応え、背を向けてその場を後にする。私はその後ろを、従者のようについていった。
「覚えたか?」
「もちろん、完璧にね」
人の声なんて、一度聴いたらすぐに覚えられる。たとえ喧騒の中であっても、すぐに聞き分けることができるだろう。
まさかこの特技がこんなところで活かされるなんてね……世の中何が起こるか分かったものじゃないわね。
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