閑話 その時、あの人は

 カナちゃんとカフェでアネファンの話を続けることしばらく。流石に何時間も居るわけにはいかないため、移動することに。


 ……残念ながら、そのままどこかに遊びに行くのは断られたけどね!


 くそぉ……もっと遊びたかった。


 曰く、『私未成年なんだけど? 連れまわすのはまずいんじゃない?』ってさ。


 いや、別にいいじゃん! カナちゃんも了承してたんだし!



 はぁ……まぁ、あんな可愛い娘と一緒にカフェ行けただけでも良しとしよう。俺もあんまり羽目を外しすぎると、週刊誌がうるさいしね。カナちゃんも知り合いに見られたら面倒だと言ってたし。



 ってわけで、車で最初の待ち合わせ場所まで送って行って、そこで解散。もちろん、道中ちょっと遠回りしたけどね!



 ……やっぱり、カナちゃんはまだプロになる気はないか。


 少なくとも、大学を出るまでは……って言ってたけど。あれだけゲームができるのに、普通に難関大学入れるぐらい頭良いんだよね……。



 『eスポーツ』という分野が確立してからというもの、プロゲーマーと言う職業はかなり一般に浸透してきたはずだ。


 それはVR技術の開発で爆発的に発展し、プロゲーマーの中でもトップ層は、プロアスリート並みに稼ぐことはできる。『プロゲーマーだから』と、忌避する理由は全くない。



 それに、カナちゃんはプロでも余裕で通用する実力を持っている。俺がチャットで本人に伝えても、どうもピンと来ていない様子だったけど……。


 何時間も連続でプレイできる体力はもちろんの事、長時間落ちないパフォーマンス、限界値に近い反応速度、マルチタスク、反響定位……そして、それらの潜在能力を、狙って出せる・・・・・・心身のコントロール。


 トップアスリートが、大舞台で『ゾーンに入った』とよくコメントするけど、カナちゃんは常にゾーンに入った状態・・・・・・・・・・・とでもいうべきか。


 自身のベストを、好きなタイミングで出せるという、驚くべき能力の持ち主だ。プロゲーマーに必要な能力を網羅してると言ってもいい。


 だからこそ俺がプロに進めてるし、どこの事務所もカナちゃんの配信を見て勧誘の機会を伺っている。ぜひ俺のところに入ってほしいけど……



「ま、人生を左右する選択だし、決めるのはカナちゃんだしね」



 今はアネファンを楽しんでるってことで、大人しく見守っておこうかな。



        ♢♢♢♢



「やはり、私の考察は間違っていなかったようだ」



 目の前に広がる光景に、ジョセフは興奮を隠しきれない様子で声を荒げた。


 スペリオルクエスト『親愛なる————へディア・キャロル』にて判明した様々な事実、そしてミューロンやホーエンハイムの話から推測した結果、ここ・・に重大な何かが隠されていると予想したのだ。


 そして今、予想していたそれ・・が目の前に現れた。



 『アネックス・ファンタジア』の世界を解明せんとするジョセフにとって、大きな謎が解明されることは、これ以上ない愉悦。



「あぁ、そうだ。我々『適応人類プレイヤー』は、死ぬ度に新しい身体を構築され、記憶を引き継いで行動を始める。しかし……リスポーンした私は、果たしてだと言えるのだろうか?」


適応人類プレイヤー名: ジョセフ 、よくぞその疑問にたどり着きました』


「君がアイリス……で間違いないかな?」


『えぇ、私の名はアイリス、あなた方適応人類プレイヤーを設計した、謂わば産みの親です』



 突如として響いたその声は、ミューロンよりも流暢で人間味・・・がある……しかし、人間ではない声だ。



『本来あなた方適応人類プレイヤーは、自身の存在を疑うことは無いはずでした。しかし、そんな疑問を持つあなたのような個体が産まれた』


『子の成長を見られたようで、大変嬉しく思います』


適応人類プレイヤー名: ジョセフ 、そんなあなたに、解答を得るチャンスを与えましょう』


『アイリスの名の元に、『無尽蔵機関ヒーラ・システム』の機能を一部変更します』


適応人類プレイヤー名: ジョセフ 、あなたが解答を得て、より一層世界へ羽ばたくことを願っています』
















『現時刻を持ちまして、スペリオルクエスト・・・・・・・・・: スワンプマン・アイデンティティ が開始されます』


『見つめてください。貴方を貴方たらしめるものは、何ですか?』





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る