ダンスパーティ、それは思惑が蠢く戦場である

まえがき


ながらくお待たせしました(_ _)

とりあえず復帰しますので、引き続き読んでいただけるとありがたいです!


と言っても忙しいことには変わらないので、間が開いてしまったらすみません……


─────────────────────


 それから数日、ついにダンスパーティの日がやってきた。


 今はすでに主賓であるティターニアちゃんをはじめ、招待客の私やセレスさんは、王宮の一室にて準備に取り掛かっている。


 と言っても、ドレスや化粧も全て使用人の人達がやってくれるので、私達は大人しくしているだけである。


 私は大舞台でのダンスは慣れたものだし、セレスさんも経験がある様子……社交ダンスの経験があるってすごいな、セレスさん……。


 まぁとにかく、私もセレスさんも本番前にしてリラックスしたものだ。



 むしろこの場では、使用人たちの方がてんやわんやの大忙しだ。何しろ、ドレスやメイクこそが、使用人たちの主戦場。もしみすぼらしい出来であったら……自身の主が他の者に下に見られるようなことがあれば、もう終わりである。


 見栄とマウントとコネと実力がものを言う社交界において、それは致命傷である。だからこそ、使用人達は全力を尽くす。


 もちろん、私に対しても。



「カローナ様、スーツを少し手直しいたしました。こちらをお召ください」


「今回は男装ですから、長い髪は紳士らしく整えます。一時的に色も変えましょう」


「カローナ様、こちらの下着を……その……そのままでは胸が目立ちすぎます」


「あはは……」



 使用人に言われるままに、特製の下着を身に着けて凹凸を目立たなくし、その上から手直しされた『星降る夜の妖精執事スターリーナイトバトラー・オブ・ティターニア』を装備する。


 濃紺に色を変えた髪は一つに結び、何とか男性に見える髪型に。「切るのはもったいない」と、使用人たちがすごい剣幕で言うから……。


 今回はメイクを施しているから、私の目の前の鏡には、女の子の理想を詰め込んだようなイケメンが映っていた。


 こ、これが私……?



「うぉぉ……でっけぇ……」


「苦しいですわ……」


「まさか最大サイズでも入らないとは……急いで直してまいります」



 セレスさんの着付けを行っていた使用人から泣きが入る。どうやらセレスさんの巨乳が、既存のドレスに入らなかった様子。まぁでも、あんなの見たらビックリするよね……口調も崩れちゃうよね……。



「まったく、何を遊んでおるか。これからが本番だというのに」


「まあまあ、リラックスしてるならいいんじゃない?」


「甘いぞ、カローナよ。ダンスパーティとは常に戦場じゃ」


「戦場って……」



 まぁでも確かに、今回はあのユーセスティア男爵に探りを入れ、背後関係を明らかにするという任務がある。【隠者ザ・ハーミット】が使えるセレスさんが中心となるとはいえ、いざとなればティターニアちゃんを守るのは私だ。


 ティターニアちゃんはそのことを言っているのだろう。



「パーティとは言わば、貴族同士の交流の場。当然、有力貴族に取り入りたい者や、将来の婚約者を探す者もおる。お主は貴族の令嬢たちに囲まれるだろうな」


「あっ、そっちの心配!?」


「当たり前じゃ! お主は客観的に見れば、若くて見目も良く、剣の腕も確か。女心が理解できて、その上私や聖騎士団にも顔が利く。しかも独り身じゃ。貴族の娘たちが想像する『理想の王子様』そのものなのじゃぞ? よいか、決して下手なことを言って言質を取られるでないぞ!」


「ちょっ、圧が強……」



 一気にまくしたてるティターニアちゃんに、私も少したじろぐ。言いたいことは分かるけど、私は女子だから別に貴族の令嬢と何かなんて……いや、意外とありか。


 っと、いかんいかん。

 浮気してたらミカツキちゃんに怒られちゃう。



「ラ・ティターニア様は、カローナ様が他の者に取られるのが嫌なだけですわ♪」


「べっ、別に……有能な者が他に流出する心配をしておるだけじゃ!」


「ツンデレ最高かよ」



 セレスさんの言葉に、ティターニアちゃんのツンデレが発動する。あ~、嫉妬でそう言っちゃう幼女と考えると、急に可愛く見えてきた。



「ご安心ください、お嬢様。私が忠誠を誓うのは貴女様だけでございます」



 渾身のキメ顔+イケボで、優雅にティターニアちゃんに跪いて見せる。メルルカさんが仕立てた渾身のスーツに、今回はきちんとしたメイクもあるのだ。


 その破壊力は、想像に難くない。



「ひぅ……/// か、からかうでないわっ!」


「わ、わたくしにもっ! 今の、わたくしにもしてくださいな!」


「え~……セレスさんには前にもやったしなぁ」


「ともかく! これなら心配はいらんじゃろ……カローナが注目を集めている間に、セレスがユーセスティア男爵に接触するのじゃ」


「えぇ、お任せくださいな!」


「えっ、もしかして、私は可愛い女の子達と遊んでていいってこと?」


「……くれぐれも失言はしないようにの」


「大丈夫! コンプラに関しては、配信で十分鍛えてるから!」


「よくわからんが、頼んだのじゃ」



「皆様、お時間です」



 ドレスの着付けやメイクアップが終わった頃、使用人の一人が私達を呼びに来た。そろそろティターニアちゃんの入場の時間なのだろう。


 私達は部屋を出て、そこで控えていたライカンさんとお非~リアさんと合流。使用人を先頭に、私とセレスさんがティターニアちゃんの前を、ライカンさんとお非~リアさんが斜め後ろを固めて移動する。


 ひと際大きな扉が開けられると、大広間で談笑していた多くの貴族たちがの目が、一斉にこちらへと向けられる。



 さて、いざ戦場へ———!

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