なんかあのカップル、ずっとゲームの話をしてない……?

まえがき


会話だけで1話書こうと思ってました


─────────────────────


「とりあえず、この前のPvP配信お疲れさま。めちゃくちゃ評判良かったね?」


「アネファン始めてから、私がPvPする配信なかったからね……宣伝の効果もあって、なかなかの同接数だったわ」


「カローナちゃんはPvPも当然強いだろうってのが前評判だったけど、その通りの実力見せてくれたしね。にしても、カサブランカはかなり強かったけど」


「あの人は本当に強かったわ……あの瞬間、完璧にやられてたもん」


「その『やるかやられるか』ってところも、好評だった理由だと思うよ」


「まぁ……完全に上を行かれたから、潔く負けを認めるつもりだったんだけど……ミカツキちゃんがあんなことするとは思わなくって。【進化の因子エボリューションコード】に関しては、ちょっとやりすぎたと思わないこともないわ」


「そうそう、そのアナザーモンスターのことを話したくってね……」


「と言うと?」


「カローナちゃんのおかげで、アナザーアビリティの異常な強さが皆に知れ渡ってさ、この数日間でアナザーモンスターの捜索がかなり激化してるんだよね」


「あー……まぁそれはそうなるでしょうね……」


「けど、あれがタロットの大アルカナをモチーフにしてるのは分かるだろ? ってことは、アナザーモンスターは22種類しかない」


「早い者勝ちになるのは仕方がないんじゃない?」


「それはそうだけどね。アネファンの運営なら23種類目以降のアナザーモンスターを用意しててもおかしくないし、一度討伐されたアナザーモンスターが再び登場しないとも限らない。ある程度の人数には、アナザーアビリティは広まるだろうさ」


「何が言いたいの?」


「まぁ、あれだ。これからのPvPが、かなり荒れるだろうってこと」


「それ、私よりクウの方が影響受けない?」


「そうなんだよ! 俺もトッププロの面子ってのがあってさ!? けどあんなのやられたら、ちょっと厳しすぎない?」


「あんたもアナザーモンスター倒したら?」


「まぁそうなるよね……ってことで、ちょうど昨日1体倒してきた」


「へっ?」


「【正義ザ・ジャスティス】、俺にピッタリだろ?」


「ちなみに性能は? 聞いていい?」


「ス、スルーですか……相手のPPペナルティポイントが多いほどこっちも強化されるって感じで……まぁ他にも効果はあるけど、カローナちゃんとも決闘するかもしれないし、これ以上は内緒ってことで」


「私なんて実際に使ってるところを配信までしたってのに」


「それは自業自得でしょうが」


「まぁいいけど……でも今のところ、あんたには勝てる気がしないから、決闘はしないわよ」


「それでもいいよ。カローナちゃんのプレイスタイルはまた違うからね」


「分かってくれるならいいけど」


「って訳で、とりあえずアナザーアビリティは確保したけど……どうせなら他にも欲しくならない?」


「それはまぁ当然……ゲーマーなら皆思ってるでしょ」


「今のところ発見されてるのは、俺の【正義ザ・ジャスティス】とカローナちゃんの【恋人ザ・ラバーズ】、あとは【刑死者ザ・ハングドマン】、【死神ザ・デス】、【運命の輪ザ・ホイール・オブ・フォーチュン】、【悪魔ザ・デビル】、【戦車ザ・チャリオット】、【女帝ジ・エンプレス】ってところか」


「一応、【隠者ザ・ハーミット】と【ザ・ムーン】も出てるわよ。というか、もう倒されてる」


「えっ、マジで?」


「えぇ、誰がとは言わないけどね。本人の許可も無しに他人に手の内を晒すなんてしないわよ」


「……カローナちゃんの知り合いっぽいってのは分かったけどね」


「あっ……」


「まぁいいよ、これ以上は詮索はしないさ。……さっき挙げた中では、【悪魔ザ・デビル】も倒されてるっぽいんだよね……倒されてないのは残り17種類ってところかな」


「次を探すの?」


「もちろん! ランキング1位を維持したいしね。ってことで、カナちゃんも一緒にどう?」


「……ちなみに、複数人で討伐したら、アビリティってどうなるの?」


「MVPに与えられるらしい……といっても、【悪魔ザ・デビル】の討伐情報しかないから、確実にそうとは言いきれないけど」


「それ私が一緒に討伐する意味ないじゃない!」


「バレたか……ごめんごめん、カローナちゃんが居てくれたら、俺もかなり助かるからさ」


「……別に協力しないとは言ってないから」


「そういう優しいところ、俺は結構好きだよ」


「面と向かって恥ずかしいこと言うなバカ……」


「……このしおらしい感じを視聴者の皆が見たらどう思うんだろう……」


「でも、次に狙うアナザーモンスターは決めてるんだよね。私が撒いた種だし」


「あぁ、【女帝ジ・エンプレス】ね……女王蜂の状況、カナちゃんはどこまで知ってる?」


「フラゴニトロ・ファラエナとかいう眷属を連れてるのは知ってるわよ」


「眷属のフラゴニトロ・ファラエナでさえ、レベル150オーバー。で、つい最近、5人チームのプレイヤーが女王蜂に出会ったらしいよ」


「マジで? 因縁の相手だから他のプレイヤーに取られたくないんだけど……」


「安心してよ、クエストすら発生しなかったらしいよ。カローナちゃんが先に発生してるからか、それとも、彼らが女王蜂にと認識すらされなかったから……」


「そのプレイヤー達は女王蜂と戦ったんじゃないの?」


「いや、女王蜂に無視されたらしい。プレイヤー5人は、女王蜂のヤバすぎるプレッシャーに一歩も動けず。女王蜂はそんなプレイヤーに目もくれず、そのまま歩き去ったのだとか」


「何その強者感……」


「実際、最強だと思うよ。名前は『邪龍皇后蜂ウロボロスヴェスパ・カラリエーヴァ——“女帝ジ・エンプレス”』、レベル265まで上がってる」


「うっそだろお前……カグラ様のレベル越えてるのかよぉ……」


「倒すのは相当難しいとは思うけど、存在は知られちゃってるからさっさとチャレンジした方がいいかもね」


「やってみるけど……とりあえず、ティターニアちゃんの依頼も抱えてるからそれが終わったらね」


「いいなぁ……カナちゃん、いろんなイベント抱えてて羨ましいよ本当」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る