初めてのPvP配信! 3戦目決着!

『因子とファンタジアが混ざり、覚醒する!』


『バイオファンタジア計画が進行———』


『プレイヤー名; カローナ の種族が一時的に ネペンテス・アグロー・・・・・・・・・・に変化します・・・・・・



「えっ、ちょっ、待っ」


「いやいやいやいやいやいやっ!?」



 私の身体を作っている全身の『ファンタジア』が“恋人ザ・ラバーズ”の因子を発現し、私の身体を作り替えていく。


 髪が緑色を帯び、頭の上にバラの花が咲き誇る。



 【進化の因子エボリューションコード——“恋人ザ・ラバーズ”】は、自身へのヘイトが100%の時のみ使用することができる、『アナザー』由来のアビリティだ。


 3分間の間、私の種族を『ネペンテス・アグロー』に変化させ、植物としての特性を得る。さらに自身に『禍屬之典かしょくのてん』効果を付与し、一定範囲のモンスターを全て操ることができてしまうのだ。


 私が3分で数十もの金剛蟹を討伐できたのも、このアビリティによってオリハルダイン・オラトリアをコントロールできたからだ。



 プレイヤーは操れないようにナーフされてるけどね。

 他のプレイヤーのコントロールするのは、システム的に難しかったのかな。

 まぁ、コントロールできたら強すぎなんだけどね。



 さて、【進化の因子エボリューションコード——“恋人ザ・ラバーズ”】の解禁によって私がネペンテス・アグローになったことにより、『“愛の鞭”——ネペンテス・シナプス』は、その真価を発揮する。



 『“愛の鞭”——ネペンテス・シナプス』。

 正式名称を、『【特殊変転エクスコンバージョン】付与 DEX特化5段階強化 神経接続式因子—ファンタジア相互活性指令制御ユニット ネペンテス・シナプス』。


 この武器は、“恋人ザ・ラバーズ”の素材と私自身の細胞・・・・・・から作られており、【進化の因子エボリューションコード——“恋人ザ・ラバーズ”】の発動中、【特殊変転エクスコンバージョン】を発動できるようになるのだ。



 私も良く使う【変転コンバージョン】は、毒をバフに変えたり、熱を衝撃波に変えたりと、何かを消費してエネルギーを生み出す能力だった。


 けど、【特殊変転エクスコンバージョン】は大きく異なる。

 即ち、『ネペンテス・シナプス』自体を自分の身体の一部・・・・・・・・に変える【変転コンバージョン】だ。



 つまり———ネペンテス・アグローとなった私が、自在に動かすことができる蔦を手に入れてしまったということだ。



「ふっ……!」



 無造作に右手を一振り。

 それだけで無数の蔦がカサブランカさんに殺到し、その猛威を振るう。

その一方で、服の下から伸びた蔦が地面を伝い、チヌークさんへと襲い掛かる。



「おいおいおいおいおいっ!」


「もうこれモンスター側だろ!?」


「むしろラスボスじゃねえかなっ!?」



 ドドドドドドッ! っと音を立ててカサブランカさんが避けた地面へと蔦が突き刺さり、砂埃を巻き上げる。



「お前本体狙え!」


「弾幕が厚くて無理ぃっ!」


「おっ、意外と簡単に斬れ———おい再生すんのかよこれ!」



 当たり前じゃない!

 本物のネペンテス・アグローも『ニョキッ♪』とかいって気軽に再生してくるのよ! 蔦が多少切り落とされたところで、私は痛くも痒くもないわ!



 縦に切り裂かれた蔦のそれぞれが再生し、巨大な手のように分かれてカサブランカさんを捉える。そのまま壁まで押し込んで、握り潰さんとばかりに力を込めていく。



「ぐっ、あっ……!」


「カサブランカ!」


「よそ見していいのかしら?」


「なっ———!?」



 私に捉えられたカサブランカさんに気を取られている隙に、チヌークさんの地面から突き出た私の根っこが彼の脚を掴み、そのまま闘技場の天井近くまで持ち上げる。


 この根っこは、私の脚から伸びたものだ。

 植物の特性を持っている私は、当然地面に根を張ることもできる。

 そしてそれを使って、地面の下から相手を狙うこともね。


 自在に動かすことができるに掴まれるという意味が、分かるかしら?



「”くろく、くろく、くろく、蒼窮覆う黒の迦楼羅天”———『鴉天狗』起動! 【妖仙流柔術———」


「ちょっ、待っ……まさかその状態・・・・でも使えるのかよ!?」



 私の蔦によって地上数十mまで持ち上げられた状態から、一気に地面へ———音速に近い速度で紐無しバンジー!



「———黒旋颯こくせんはやて】!」


「っ———!!」



 まるで、隕石の落下だった。

 目にもとまらぬ速さでチヌークさんが地面に直撃し、地面を砕きながら円形に陥没させる。闘技場全体を揺さぶるほどの衝撃に、観客の中には悲鳴を上げる者もいた。


 そんな威力の技を耐えられるはずもなく、チヌークさんのHPは一瞬で消し飛んだ。



「グッ……あぁぁぁぁぁっ!」



 指のように無数に伸ばした蔦に捕まっていたカサブランカさんから、叫び声が上がる。ネペンテス・アグローがそうであったように、『ネペンテス・シナプス』を使った私は相手を蝕んで捕食するのだ。


 カサブランカさんが次々と使用する暗器を完全に無視し、鎧を砕きながら次々と身体に食い込んでいく。


 貫き、締め上げ、捩じ切り……弾けるダメージエフェクトによって彼の姿が見えなくなった頃———いつの間にか聞こえなくなった叫び声の代わりに、アナウンスが鳴り響く。



『カサブランカ、チヌークの両者戦闘不能! カローナ・ミカツキペアの勝利!』

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