初めてのPvP配信! 3戦目
なんか観客席の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる……。
これだけ盛り上がっているコロシアムの中でも、あんな可愛い女の子の声ならよく聞こえる。『私のせいか!?』とか叫んでたらなおさらだ。
もう次の試合が始まるから放置するけどね。
絡まれたらめんどくさ……おっと、集中が途切れちゃうからね。
さて、次の対戦相手なんだけど……
「噂のカローナさんね、よろしく」
「えぇ、よろしくね!」
「Mr.Qは一緒じゃないんだ、残念……」
「まぁ、今回はミカツキちゃんにPvPを教えるって名目でやってるからね」
「お姉さん忘れてたよね?」
「ナンノコトカナ……?」
「まぁ仕方ないか。ワンチャン、あいつから1位奪還できないかと思ったんだけど」
この口ぶり、さてはかなりの上位ランカーだな?
それも、
私に色々と話しかけてきたこの男性プレイヤーは『カサブランカ』、ペアを組んでいるもう一人の男性プレイヤーは『チヌーク』と言うらしい。
チヌークさんは何やら豪華そうな鎧で全身を包み、『ツヴァイハンダー』なんていう珍しい武器を使っている。
一方でカサブランカさん……こっちの方が厄介そうだ。
パッと見は、何の変哲もない
分かったのはそこまでで、武器も持っていない様子の彼の
そこまでする意味があることと、見た目まで気にする余裕があるということ。
一筋縄ではいかなさそうだ。
ま、私の戦い方は変わらないから、とりあえず突撃するんだけどね!
『カローナ・ミカツキペアvsカサブランカ・チヌークペア、試合開始!』
♢♢♢♢
「ふんっ……!」
「っ!」
口から漏れた気合は、カサブランカさんからだった。
試合開始直後に【レール・アン・ドゥオール】と【メタバース・ビジョン】を使ってスタートを切ろうとしていた私は、彼が投げた2本の投げナイフを見て脚を止める。
後ろにはミカツキちゃん。
私が避けるわけにはいかないか……。
私はモップを振るってナイフを弾き———ナイフに括りつけられていた糸にモップを絡めとられ、次の動きが封じられる。
「操糸術!?」
「さぁどうかな!」
『お前の相手は俺だ』と言わんばかりに糸を引っ張るカサブランカさん。一方、私の動きが止まった隙に接近するチヌークさんは、真っすぐミカツキちゃんを狙うようだ。
「ミカツキちゃん!」
「とりあえず自分で何とかしてみるから!」
そう言って重装弓の杭を地面に突き立てるミカツキちゃんは、あまり相手を恐れていない様子。
分かった。
じゃあ……
「あなたの相手は私ね!」
「願ってもない!」
【アンシェヌマン・カトリエール】起動!
ミカツキちゃんが心配だから、サクッと行かせてもらうわよ!
糸に絡めとられたモップを放置して、一気にカサブランカさんへと間合いを詰めた私は、インベントリから取り出した『ブリリアンドール・ナイフ』で彼の首を狙う。
が、当たる直前で滑り込んだカサブランカさんのナイフに弾かれ、その刃は届かない。
「ひゅう、噂に違わず速いねっ」
「簡単に弾いておいてどの口が言うのかしら!?」
カサブランカさんに弾かれた右手を引きながら、左手のナイフを振るう……ように見せる一瞬のフェイントを入れ、下から上へと蹴り上げる。
それも読んでいたのか、わずかに下がったカサブランカさんの前髪を掠めるも、クリーンヒットとはならず。
そして左右に広げた彼の両手に、突然ナイフが一本ずつ現れたのを視界の端に捉え……
「おい、これも避けるのかよ」
「だってあなた、斬る気も刺す気もなかったし」
彼が横凪ぎに放ったローキックを、【アンシェヌマン・カトリエール】のジャンプで躱し、彼の頭上を取る。
初期装備に見える彼の靴には、細くて見難いけど糸のようなものが張られており、今のローキックが避けられなければ、私の脚に糸が絡みついて動けなくなっていただろう。
ただ、頭上を取った私と彼の目が合うということは……彼は私の動きが見えているということ。
彼も私と同じくAGIにかなりステータスを振っているのと、彼の目から漏れるエフェクトは、おそらく私の【メタバース・ビジョン】と同じ系統のアビリティを持っているのだろう。
【アンシェヌマン・カトリエール】の空中ジャンプ効果によって空中に着地すると同時、私はナイフをインベントリに放り込んで『双頭剣アンフィスバエナ』を取り出す。
これだけの重量だ。
力を籠めなくても、重力だけで十分な威力が出る。
「くっ……!」
「おっ?」
私が手を離したアンフィスバエナは、重力に従って彼の頭めがけて落下を始める。その超重量の刃が彼の頭に食い込む直前、彼がどこからともなく取り出した深緑の布にその姿が包まれ———
アンフィスバエナは布を貫くも、彼の身体を捉えることなく地面に突き刺さった。
その直後、私の視界は白い煙に包まれ、周りが全く見えなくなってしまう。
あー、なんとなく分かってきたかも。
深緑色の布は、多分『幻影のコート』、この煙は『ホワイトスモーク』だろう。
通常、アイテム等を使えない『決闘』システムだけど、アビリティによって一部アイテムを使用できる
それが、
ってことで、相手はおそらくその系統のジョブなのだろう。
まずいわね……煙でヘイトが外れた状態だとヘイトを取られていない相手に対してダメージが跳ね上がる『隠密特攻』を受けることになる。
仕方ない。
鈴を鳴らして反響定位でカサブランカさんの位置を把握、瞬時に装備を『ゴールデンアヴィス』シリーズに変更。
【
「【ドゥルガー・スマッシュ】!」
「ぅおぉっ!?」
強力なノックバック効果を持つ【ドゥルガー・スマッシュ】に、オリハルダイン・オラトリアのシャコパンチを乗せてぶっ放す!
流石に本物の百分の一程度の威力だけど、その風圧だけで煙を吹き飛ばすには十分。煙が晴れると、巻き込まれるのを回避したらしいカサブランカさんが、少し離れたところで冷や汗を拭っていた。
……向かってきたのに合わせてカウンターしたつもりだったんだけどなぁ。
「あなた、強いわね」
「これでもランキング上位なんでね」
「ところで、参考までに
「え~……そんなわざわざ相手に情報を与えるような……」
「お願い! 私の
「いや、あんた配信で公開してるよね?」
「バレたか……」
・交換条件が不公平すぎる
・カローナ様分かってて言ってるよね
・ただ相手が情報を公開するだけの交渉で草
・でもランカーのカサブランカって巷じゃ有名じゃね
・確かに、カローナ様が知らないだけという
「まぁ、PvPをよくやるプレイヤーには知れ渡ってるし、言ってもいいんだけどね」
「本当!?」
「メインが『エクゼキューター』、サブが『曲芸師』だ。珍しいだろ? そう簡単に勝てると思うなよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます