親愛なる————へ 5
「『アネックス計画』が開始して以降、数年経っても星の開拓は遅々として進行しなかった。なぜだか分かるか?」
「
スペリオルクエスト『その翼に誇りを、その瞳に覇天の輝きを』において、
そしてそれは昔、ホーエンハイムのような最初期の開拓者達がなし得なかったことだった。
「そうだ。
「それはそうだろう。
「しかし、現代の兵器を以てしても、
「それが『ファンタジア計画』だと?」
「そうだ。そこで目を付けたのが、『原生生物』だった。君達は不思議に思わないかね? いや、思わないだろう。彼らが、
「いや、それは……」
それは、
「誰かに教えて貰わずとも、鳥は空を翔び魚は海を泳ぐ。この星におけるアビリティとは、そのレベルのことなのだ」
「あらゆる生物が、本能的に会得しているものだと?」
「その通り。だからこそ我々人類には不可能であって、私とダーウィンが研究に心血を注いだのだ」
ホーエンハイムの話に、私はピクリと反応する。『ダーウィン』……それは、いつだったかにカグラ様の話に出てきた人の名前だ。
私もしばらく忘れてたんだけど、こんなところで名前が出てくるとはね……。
「私とダーウィンは、原生生物を徹底的に調べあげた。そして見つけたのだよ。この星に充満するダークエネルギーを用いて使う技……君達が言う『アビリティ』を扱うための、重要な遺伝子を」
アレクシス・ダーウィンとフィリップス・ホーエンハイム……この二人は同時、『世界の頭脳』の呼ばれるほど突出した天才であった。
全く未知の生物のゲノム配列の中から、未知のエネルギーを活用するための遺伝子を発見するのに、たった3年しか時間を用さなかったほどだ。
「我々の発明はそこからだ。その遺伝子を解析し抽出、ヒトの万能幹細胞に導入しダークエネルギー感応性を持つヒト幹細胞を作り上げることに成功したのだ。我々はこれを『ファンタジア』と名付けた」
女王蜂と戦ったとき、カグラ様の会話の中……今まで様々な場面で、『ファンタジア』という単語は出てきた。
……まさかそれが遺伝子操作をした細胞、しかもすでに
どう考えてもファンタジーとはほど遠いけど、これ大丈夫?
「しかし、『ファンタジア』を作ってどうしたと言うのだ? まさかそれを一人ひとりに注入して……なんてことではないだろう?」
ジョセフさんの疑問は最もだ。細胞を注入してその能力を使えるというのであれば、人間誰でもエラ呼吸になったり超音波を出せるようになったりできてしまう。
「あぁ、そうだ。たった数十個の細胞を注入したとして、ヒトの60兆にも及ぶ細胞が同じ能力を発現できるわけがない」
「ならばどうやって───」
「『ファンタジア』を培養し、全ての細胞がダークエネルギー感応性を持つ、全く新しい人類である適応人類……つまり、『
「「「っ!?」」」
確かにそれは……NPCとプレイヤーを区別して考えるわけだ。
ホーエンハイムの話によると、『モンスター』は原生生物のうち、非知的生命体のこと。『NPC』は原生生物のうち、知的生命体のこと。
そして『プレイヤー』は、細胞培養によって産まれた新人類……といったところか。
「『人間を作り出す』という、倫理観に喧嘩を売るような実験にはこの際目を瞑ろう……気になる部分はまだある。『
───ただ作られた人間というだけなら、アビリティが使えるだけで普通の人間と変わらない。
『プレイヤー』に備わった機能を説明しきるには不十分だ。特に……
「『リスポーン機能』は? ただ細胞培養によって産まれた新人類というだけでは、生き返ることなどないだろう?」
その通りだ。
『プレイヤー』は、例え死んでもリスポーンすることができる。それは、普通の生物とは駆け離れた能力と言っていいだろう。
「……我々研究者の……いや、人類の、究極の発明と言って良いだろう」
「何……?」
「我々は考えた。再生し続ける
「半永久的なリソースが存在すると?」
「存在するではないか。ある日突然現れ、あらゆる生物を喰らいながら増殖を繰り返す……打倒するべき敵が」
「まさか……」
「そのリソースとは、
──無尽蔵機関 《ヒーラ・システム》──
「その名の通り、『
「そんなバカな……」
「可能となったのだよ。君達
例え死んでも、記憶や身体能力……あらゆる点において同じである個体が『ヒーラ』によって瞬時に作成される。
それこそ、君達『
─────────────────────
あとがき
……い、一応装備品だとかもデータとしてアイリスに保存されるから、死んでも失くならないってことで、見逃してくだせぇ……
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