親愛なる————へ 1
突如として発生した強い風に、私達が今いる村長さんの家が揺れる。
そのプレッシャー故か、はたまたトラウマ故か……村長さんは小さく悲鳴を上げながら、頭を抱えてその場に踞った。
「ひぃっ……! き、来た……あれじゃっ、
「っ……!」
村長さんのその言葉を聞いた私達は、即座に外へと駆け出す。
暗闇の中に浮かび上がる巨大な影は、到底生物のものではない……というか、どう見ても
ヘリコプターに次ぐ……いや、ヘリコプターを越える技術力を感じる、あまりにも場違いな物体。
どこから現れたのか? とか、この飛行船はなんなのか? とか、様々な疑問が湧いてくるけど……
まさかこの、明らかにオーバーテクノロジーな
絶句する私達4人の様子など関係ないとばかりに、飛行船の一部が音を立てて開いていく。
そして───
『プレイヤーの存在を確認しました。直ちに【ディア・キャロル】内へ送還を開始します』
無機質な音声が響くと同時、私の意識はブラックアウトした。
♢♢♢♢
『送還完了』
『
『……——Loading——……』
『【因子】の存在を確認しました』
『
「んっ……」
「あっ……カローナ様、起きましたか?」
「ぉわっ……!」
ふと目を覚ますと、目の前にセレスさんの顔があった。
くぅぅ……なんというビジュアルの暴力……同性の私でもドキッとするわ……。
……あれ?
セレスさんは、寝てる私の顔を覗き込んで、何をしようとしてたんだろう?
「さてカローナ様、ここは何処なのでしょうか」
「え? うーん……【ディア・キャロル】内に送還って言ってたから、あの飛行船の中なんだろうとは思うけど……」
私とセレスさんがいるここは、縦も横も10mは優に超えていそうな、広くて何もない部屋だった。全面がガラス張りになっていて、その奥には何やら見慣れない機械が並んでいる。
「ジョセフさんとヘルメスさんは?」
「
確かに少し心配だ。
ヘルメスさんが持つ魔道具が強力なのは、【霧隠れの霊廟】を攻略した際に知っている。けど、元々が非戦闘職だ。
ジョセフさんもそうだから……私やセレスさんが合流するまで耐えてくれるといいのだけど……。
ヘルメスさんもプロだから、簡単にやられたりしないとは思うけどね。
「セレスさん、アナウンスの内容って覚えてる?」
「えぇ、『戦闘データの測定』でしたわね。
「十中八九そうよねぇ……」
私とセレスさんは戦闘職がメインだから、『戦闘データの測定』をさせられるのだろう。となると、非戦闘職の二人は何をさせられるのだろうか……。
「ま、考えたって仕方がないわね。こっちはこっちで、目の前の問題を解決しないと」
「そうですわね……ジョセフ様とヘルメス様には申し訳ありませんが、
私とセレスさんが意思を共有したところで、ゴゴゴッ———と重々しい音を立てて、私達の前方にある床が開いていく。
そして現れたのは———
「グォォォォォッ!!」
「ちょっ、まさかのティラノサウルス!?」
「それは想定外ですわぁっ!」
10mは超えていそうな巨体。
全身を覆う、鎧のような分厚い鱗。
ナイフのような鋭い牙。
それは紛れもない、超有名恐竜の『ティラノサウルス』であった。
かつて大地を闊歩し頂点捕食者として君臨していたのだろうと、はっきりと分かるほどに強者の覇気を纏っている。
とりあえず【鑑定】を行う。
————————————————————
Name:モデル《Strength》・プロトタイプ
Lv:99
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「普通に強いわね!?」
「やるしかなさそうですわね、カローナ様は前衛をお願いしますわ!」
「もちろん、セレスさんには一切攻撃を向かわせないわよ!」
「突然イケメンになるカローナ様が好きですわ!」
……冗談を言える辺り、セレスさんも余裕がありそうだ。
狂っ……熱狂的過ぎてちょっと言動に気になる部分はあるけど、セレスさんが後衛でサポートしてくれるという安心感はやっぱりすごい。
尻尾による薙ぎ払いと噛み付き、突進……あとは咆哮に威圧効果もありそうだ。
とりあえず【マキシーフォード】と【ドゥヴァン・デブーレ】でAGIにバフを盛り、【スーパー・ビジョン】で動体視力を、【
さーて、『戦闘データの測定』だったっけ?
どこの誰が見てるのかは知らないけど、この程度の相手ぐらいボッコボコにして度肝を抜いてあげるわ!
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